詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

トランプ演説から思うこと

2025-01-21 17:52:13 | 考える日記

 トランプの米大統領就任演説要旨を読んだ。(読売新聞、2025年1月21日夕刊、西部版・4版)。いろいろ言っているが、私がいちばん注目したのは、次の部分。

米国はパナマ運河の建設に多額の資金を費やし、人命を失った。パナマによって約束は破られ、米国の船舶はひどい過大請求を受けている。何よりも中国がパナマ運河を運営している。我々は中国ではなく、パナマに与えたのだ。我々はそれを取り戻す。

 これは、「領土拡張主義」である。
 「アメリカ」は、もともとヨーロッパから侵略したひとが、勝手に「建国」したものであり、もともと「拡張主義」の「強欲者」の国である。トランプは、メキシコ湾をアメリカ湾と解消することも主張しているが、いまでこそカリフォルニアやテキサス、フロリダは「アメリカ」だが、それはメキシコから戦争で奪い取ったものだ。テキサスの油田地帯がメキシコのままだったら、アメリカ経済は違ったものになっていただろう。(メキシコも、アメリカと同様、ヨーロッパから侵略してきたひとが力づくでつくったものだが。)
 なぜ、とりわけ「パナマ運河」に注目するのかというと。
 「アメリカ建国」はヨーロッパ人が西へ西へと進んできた結果、つくられた国である。最初は東海岸だけだったが、その「強欲主義者」はアメリカ大陸を横断し、西海岸まで「領土」にし、それだけでは満足せず、いま、それは太平洋を横断し、アジアにまで手を伸ばしている。
 日本はすでに、その支配下にあるし、台湾も「独立」という名目で支配下に置こうとしている。台湾を足場に中国大陸にまで「強欲主義(資本主義とも言う)」を侵略しようというのが狙いだろう。
 この西向きの「領土拡大」の背後では、東向きの「領土拡大」もあって、それはNATOの拡大という形で実現されてきた。トランプはNATO加盟国に軍事費の増大を要求しているが、これはアメリカの軍需産業に金を払えという「強欲主義」の主張である。その主張を隠すためにウクライナを刺戟し、ロシアと戦争をさせた、というのは私の見方だが……。ともかく、東からも西からも、アメリカの「強欲主義」を「自由主義」と言い換えて「侵略(領土拡大)を正当化しようというのが、トランプの狙いである。(バイデンも、この東西からの両挟みを推進していた。やはりアメリカの軍需産業によってコントロールされていたということだろう。)
 で、パナマ運河。
 トランプはすでに、東西両方向からの「強欲帝国」は完成されつつあると考えているのだろう。次は、南へ。南も「強欲主義」で支配すれば、アメリカは「世界帝国」になれる、ということだ。支配の矛先を南へ向けた。
 これは、象徴的な転換である。
 そして、ここでもトランプは「中国がパナマ運河を運営している。我々は中国ではなく、パナマに与えたのだ。我々はそれを取り戻す」と中国を引き合いに出しているのだが、何がなんでも中国を支配してしまおう、中国の影響力を最小限にして、つまり、できれば中国経済を中国国内に封じ込めてしまおうということだろう。
 ここで、私が思うのは、このアメリカの「強欲主義」に立ち向かい、それぞれの国が「独立」を守るためには、アメリカがまだ手を伸ばしていないアフリカの諸国とどうやって連携を築くかということだ。これが、たぶん、唯一の可能性だ。(そういうことを理解しているからこそ、中国は、アフリカの諸国と連携しようとしているように、私には思える。)
 ちょっと脱線したがというか、先走りすぎたが。
 「対南」政策について言えば。
 中南米の諸国は、すでに冷戦時代に、アメリカの政治によってさまざまな支配を受けている。だからこそ、トランプは、パナマを支配することは簡単だと思い、パナマ運河を取り戻すと言ったのだろう。かつての米政権がCIAと軍を利用しながら、南アメリカの政権を自由にあやつった記憶は、トランプにははっきり記憶されているだろう。
 「民主主義」と言えば、聞こえはいいが、冷戦時代に、アメリカが「民主主義を守る」という名目で、南アメリカ諸国で何をしてきたか、その歴史を振り返れば、これから何がおきるか予測できるだろう。
 パナマは「序の口」。中南米には、「親アメリカ」ではない国(政権)もある。そうした国への「工作」もこれから再びはじまるだろう。
 だからこそ。
 アフリカが問題になる。世界を自由で開かれてたものにするためには、まだアメリカが「強欲主義」の手を伸ばしていない地域・国民の活動が重要になる。いや、アメリカには、すでに「奴隷」としてアフリカのひとびとを搾取してきた時代があるのだが、だから、トランプはアフリカに関しては「みくびっている」のかもしれないが。

 ともかく。
 パナマ運河の行方が、今後の世界の行方の「指針」になる。私は、そう思った。


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