行動は自分に欠けているものの獲得を目指すか、存在しないものの創造を目指す、とベルグソンは書くのだが、この「存在しないもの」を単にいまそこにないものではなく、「無」と考えるとどうなるか。
「無を創る」。
「無になる」とか「無我の境地」ということばが日本語にはあるが、「無を創る」というのは、それとは違う。「有」の否定(「有」からの解放)ではなく、「有」とは関係なく(「有」を踏まえず、「有」を基盤とせず)、「無を創る」。
ベルグソンのなかに「絶対的な無」ということばが出てくる。これは「全体の観念」であり、しかもそこに精神のひとつの運動が加わっている。「否定」という運動だ。
ある事物から他の事物へと飛び移る。飛躍する。ひとつのところに身を置くことを拒む。ひとつのところに身を置くことを否定する。そして、自分の「現在」の位置を、自分が立ち去った(拒否、否定した)位置との関係において規定する。
その瞬間にあらわれる「無」というもの。それが絶対的。
このメモは、どこまでがベルグソンのことばで、どこからが私のことばなのか、実はわからない。ノートのメモに、引用したことばのページが書いてないので、探し出せない。 私が注目したのは「運動」ということばである。「飛び移る」「飛躍する」は「運動」のひとつだが、運動するのは「肉体」である。ベルグソンは「精神」と書いていると思うが、「身を置く」の「身」には「肉体」にほかならないし、「精神」の運動であってもベルグソンはそれを納得するとき「身」を関係させている。「身を置く」は比喩ではない。現実であり、「精神」ということばこそ「比喩」なのだ。
デカルトは「我思う、ゆえに我あり」と言ったが、ベルグソンなら「我行動する、ゆえに我あり」と言うのではないか、と私は想像している。
いま書いていることは「比喩」か。比喩よりもなぞめいている「暗喩」か。
「暗喩」とは何か。それは「構想」である。存在しないものを、存在するものによって描き出すことだ。それはつねに動く。肉体を動かす。
この「比喩/暗喩」の反対のものは何か。「概念」である。「概念」の抽出。
そうならないようにしないといけない。
「概念」を書くこと、たとえば、ベルグソンを読み、そのことばを利用して体験以外のことを書くことは、「体験(肉体)」を殺すことである。--きょうの反省。
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