詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

やっぱり「GoTo」は五輪のため(情報の読み方)

2020-11-16 08:33:15 | 自民党憲法改正草案を読む
やっぱり「GoTo」は五輪のため(情報の読み方)

 14日に、菅はなぜ「GOTO」にこだわるか、ということを書いた。オリンピックの観客が宿泊するためのホテル、旅館を倒産させないためだ、というのが私の見方だ。そのことをあらためて感じさせるのが、2020年11月16日読売新聞(西部版・14版)1面の記事。

五輪「観客あり」確認へ/首相・IOC会長 きょう会談

 という見出しがついている。ウェブサイトには「独自」というマークがついている。特ダネということだ。こんな「会談内容予測」が「特ダネ」というのは、ニュースの価値づけとしては、非常に「奇妙」である。「会談」はまだおこなわれていない。密室でおこなわれた会談の内容(実際に話されたこと)を秘密のルートで入手した場合は「特ダネ」だろうが、まだおこなわれていない「会談内容」が「特ダネ」であるはずがない。読売新聞が報道していることが話されない可能性がある。だから「確認へ」と「へ」をつけごまかしている。「秘密」会談後ならば「確認」という「へ」のない形で報道される。そしてそれが読売新聞だけが入手できた内容ならば「特ダネ」になる。
 こんなまだおこなわれていない「会談内容」を、なぜ「特ダネ」という形で報道できるのか。それは、この「会談内容」が「会談内容」ではなく、菅(側)がバッハに伝えたいことがら、会談で主張することがらだからである。読売新聞は、菅の側近のだれかに取材し、菅が何を話すかを聞き出したのだ。そして、それはたぶん「聞き出した」というよりも、だれかが読売新聞に「リーク」したのである。記者が聞き出したのなら、ほかのメディアも聞き出しているかもしれない。「特ダネ」ではない可能性もある。「特ダネ」と言えるのは、取材先(リークしたひと)が「これは、読売新聞だけに教えること」と言っているからだろう。(もちろん、記者が自分から接近し、取材後に「この内容について他のメディアからも取材を受けていますか」と確認し、「受けていない」というこ回答をもとに「独自」と判断することもできるが。)
 記事を読んでみる。(番号は、私がつけた。)

①菅首相は16日、国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長と首相官邸で会談する。両氏は、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大で来夏に延期された東京五輪・パラリンピックについて、観客を入れた形で開催する方針を確認する見通しだ。

 これは「前文」。いわば、記事の「要約」。ここでは「両氏は」「確認する見通しだ」と書いている。あくまで「見通し」なのだが、読売新聞が菅(側近を含む)とバッハ(側近を含む)の「両方」から情報を入手したかどうかは、これだけではわからない。

②バッハ氏は15日に来日した。16日午前に首相と内閣発足後、初めて対面で会談する。午後には、五輪延期を決めた安倍前首相と会う。

 「本記」の書き出し。バッハ来日は事実報告。その後は、すでに決まっている予定。ただ、とても奇妙なのは見出しにとっていることとは無関係な「午後には、五輪延期を決めた安倍前首相と会う」とわざわざ、安倍の名前を出しているところである。この部分は、記事の末尾で「また午後には、五輪延期を決めた安倍前首相と会う」で十分なことがらである。「本記」のどこにも、そのご安倍の話は出てこないのだから。
 記事のつづき。

③菅首相はバッハ氏との会談で、東京五輪を「人類がウイルスに打ち勝った証しとして開催する」との決意を表明する。安全・安心な大会とするため、バッハ氏との間で緊密に協力することで一致する方向だ。

 菅が「決意を表明する」と書いている。これは、「リーク」された内容だ。しかし、その後のことは「一致する方向だ」と逃げている。一致するかどうかはわからない。わかっていることは菅が「決意を表明する」という菅側の「予定」だけである。「決意を表明する」には「方向だ」ということばがついていない。ニュースの「主語」は菅であり、バッハは「脇役」。
 東京五輪を「人類がウイルスに打ち勝った証しとして開催する」というのは、すでに安倍が言っていることである。安倍のときからの「規定路線」である。ここでは安倍が「主役」のように振る舞っている。(「安倍よいしょ」を読売新聞はやっているわけである。)
 このあとの記事が非常に重要。「本記」中の「本記」部分だ。

④首相は、大会に参加する外国人選手らが入国後、14日間待機せずにすむ仕組みを今月から導入し、大会準備も進んでいることを説明する。海外からの観客受け入れや、観客数の上限、防疫措置についての調整状況も話題となる見込み。

 ここでは実際の「大会運営」のあらましが書かれている。ここでも「説明する」と主語は菅であって、バッハは登場していない。注目しなければならないのは、「大会に参加する外国人選手ら」と書き始めながら、大会運営の説明の「主力」が「選手」ではなく、後半で「海外からの観客」に移っていることである。五輪は「選手優先」であるべきだと思うが、選手をほうりだして、観客対策を「説明」するらしい。
 つづきは、こう書いてある。

⑤政府は観客数の上限について、プロ野球など国内のスポーツイベントの規制に準じることを検討。観客の受け入れ方針は国内外の感染状況を踏まえ、来春に最終決定する見通しだ。

 すべてはまだ「検討」なのだが、ここでも「主題」は「選手」ではなく、「観客」である。そして、そのことに注目するならば、五輪開催の「検討資料」にするために、プロ野球などの観客数制限が緩められた、と読むべきである。ここには書いていないが「GoTo」の結果も、もしかすると検討されるかもしれないが、これは「感染拡大」を招いているという批判があるので、「資料」としては提供しないかもしれない。ただし、「宿泊施設」については説明をするだろう。「ホテル・旅館」の経営は大丈夫だという説明をするために、「GoTo」の利用状況(宿泊施設の経営状況)は説明されるだろう。その説明をするために「GoTo」は絶対必要だったのだ。また今後も宿泊施設を維持するためにはキャンペーンをつづける必要があるのだ。「GoTo」をつづけなければ倒産してしまう宿泊施設が出かねないのだ。(私はある大手のホテルマンから、このままではつぶれる、という悲鳴を聞いた。)
 あらゆることが「五輪」のためにおこなわれている。国民の健康はどうでもいいのである。そして、この「五輪のため」というのは、たぶん「電通のため」なのである。五輪が開かれないと、電通の想定していた「収入」がすべて消える。政権を支えている「宣伝機関」がつぶれてしまう。そうならないようにするために、安倍・菅は懸命なのである。

 こんなことは、どこにも書いていない。
 しかし、読売新聞の記事からは、五輪には「観客がやってくる」(観光客がやっていくル、経済がもちなおす)という「宣伝」が込められている。
 「来春に最終決定する見通し」とすべてを「将来」にまる投げする形で記事を締めくくっているが、こんな予測をしている状況ではないだろう。コロナの感染状況はどうなっているか。
 31面に、こう書いてある。

 国内の新型コロナウイルスの感染者は15日、新たに38都道府県と空港検疫で1440人確認された。3日連続で過去最多となった14日からは減少したものの、1400人を超えたのは5日連続となる。死者は5道府県で計7人だった。

 「14日からは減少したものの」ということばが挿入されているが、この「確認」は「土曜・日曜」を挟んでいるから検査数自体が少ないかもしれない。それでも「1400人を超えたのは5日連続」という状況である。この状況を考えるならば、とても五輪の観客確保を語っているときではないだろう。五輪には外国から観光客がやってくる、とのんきに宣伝しているときではないだろう。日本だけではなく、世界中で感染が拡大しているさなかである。アメリカや欧州、いや東南アジア以外のあらゆる国からは、選手が出場できるかどうかさえわからない状況ではないのか。
 こんなときに、五輪の観客確保対策を話し合うことは非常識である。
 「リーク」されたならリークされたでかまわないが、リークされた内容を批判する視点が必要である。リークされたから、それをそのまま「宣伝」の形で書いているのではジャーナリズムとは言えないだろう。リークされたことであっても、そこに隠されている問題点をこそ暴くべきである。



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「情報の読み方」は10月1日から、notoに移行します。
https://note.com/yachi_shuso1953
でお読みください。
 

#菅を許さない #憲法改正 #読売新聞



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