連載小説
朝、台所でコーヒーを入れながら、ことばは新聞の連載小説を片目で読んでいた。
もう片目はポットに落ちていくコーヒーを見ていた。
頭では、ことばは何になる準備をしていたのだったか思い出そうとしていた。
小説の中ではネクタイをしめた男が出てきて、
黄色いバターの塗ったパンをかじり終えてコーヒーを待っている。
コーヒーが出てくるまで新聞を折り畳みながら、連載小説を読んでいる。
咳をして(時間がないので催促している)
足を組み換えて(時間をどうつかっていいのか考えていないので)
靴下の色とズボンの色が黒い革靴にあうか茶色の靴にあうか……。
その小説にはストーリーがなくて、小説を読む人の細部だけが何日もつづき、
しかも人物の名前が毎朝変わっている。
まるで意味不明の現代詩だという批判が読者から投書されてきたという。
そこで書き手のことばは、こんなふうに説明する。登場人物は
これからますます増える。増えすぎるて誰が誰なのか区別がつかなくなる。
つまりひとりに見えてきたら、そこで小説は終わるのだ、と。
*
「谷川俊太郎の『こころ』を読む」はアマゾンでは入手しにくい状態が続いています。
購読ご希望の方は、谷内修三(panchan@mars.dti.ne.jp)へお申し込みください。1800円(税抜、送料無料)で販売します。
ご要望があれば、署名(宛名含む)もします。
「リッツオス詩選集」も4400円(税抜、送料無料)で販売します。
2冊セットの場合は6000円(税抜、送料無料)になります。
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咳をして(時間がないので催促している)
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靴下の色とズボンの色が黒い革靴にあうか茶色の靴にあうか……。
その小説にはストーリーがなくて、小説を読む人の細部だけが何日もつづき、
しかも人物の名前が毎朝変わっている。
まるで意味不明の現代詩だという批判が読者から投書されてきたという。
そこで書き手のことばは、こんなふうに説明する。登場人物は
これからますます増える。増えすぎるて誰が誰なのか区別がつかなくなる。
つまりひとりに見えてきたら、そこで小説は終わるのだ、と。
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谷川俊太郎の『こころ』を読む | |
クリエーター情報なし | |
思潮社 |
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リッツォス詩選集――附:谷内修三「中井久夫の訳詩を読む」 | |
ヤニス・リッツォス | |
作品社 |
「リッツオス詩選集」も4400円(税抜、送料無料)で販売します。
2冊セットの場合は6000円(税抜、送料無料)になります。