~まず清算すべきは「日帝残滓清算」論~
最近、韓国の国宝指定番号に日本の植民地支配のなごりが
残っているとして、日本人が指定した国宝第1号(崇禮門、いわゆる
南大門)を別のものに変更すべきだとする世論が活発になりつつある。
このブログでも何度もとりあげてきた、いわゆる例の「日本帝国
主義の残滓清算」論だ。
テレビニュースやラジオで出てくるのは知っていたが、正直、
僕はこの件に関する関連記事を読む気には全くなれなかった。
それでも、ふと次のような記事が目に入ってきたのは不思議だ。
유홍준 "국보 교체가 일제 청산? 말도 안된다!"
ユ・ホンジュン長官「国宝番号変更が日帝残滓の清算?
馬鹿げた話だ!」
(CBSニュース 電子版 11月8日)
めずらしい記事だと思って、一応、最後まで目を通してみた。
すると、韓国文化財庁長官のこの問題についてのかなりつっこんだ
批判的な意見が紹介されていた。
以下、記事の中から長官の発言をいくつか引用してみる。
"지금의 국보 체계가 일제 잔재를 반영하고 있다는 감사원
입장은 터무니없는 것"
今の国宝体系が日本の植民地支配のなごりを反映しているという
監査院の立場は全く理解に苦しむ。
"문화재보호법에 따라 국보 체계가 정해진 것이 1962년인데,
이게 어떻게 일제 잔재냐""감사원은 괜한 오해를 불러일으키지
말라"
文化財保護法に基づいて国宝体系が定められたのは1962年の
ことなのに、どうしてこれが日帝の残滓と言えるのか。監査院は
つまらない誤解を広げるようなまねはやめてほしい。
"그렇게 따지면 지금 우리 것 중에 일본 흉내 안 낸 것, 일제
잔재 아닌 것이 뭐가 있느냐"
一々そういうふうに言うのなら、今の韓国のもので日本のまねを
してないもの、日帝の残滓でないものが、何があるのか。
いわゆる建前としての「日帝残滓清算論」に対するこの種の批判が、
公式的な紙面で活字として現れることは、ほとんどないと言って
いいだろう。しかし、実はかなりの層の韓国人が本音の部分では、
様々な異論や批判的な視点を持っているのも事実だ。
僕の個人的な経験から言ってもそうだ。
「一つ一つ見ていくなら、今の韓国のもので日本のまねをして
ないもの、日帝の残滓でないものが、何があるのか。」
この発言に代表されるかなりの層の韓国人の本音を、単なる
自嘲で終わらせないためにも、決してこの種の論議をタブー視
してはならないと思う。
いや、韓国社会の未来のためにも、そろそろタブー視をやめ、
屈辱的な歴史を直視して、ありのままの現実から出発すべき時期に
来ているのではないかと思う。それは決して「自虐」的な行為では
ない。
韓国社会が日本による被支配の歴史を直視し、真の意味で
その歴史を克服するためにこそ必要な行為なのだ。
そのためにも、まず清算すべきものが、建前としての「日帝残滓
清算論」なのではあるまいか。
国宝指定番号をめぐる論議が、こうした流れにつながることを
祈ってやまない。(多分、難しいだろうけども・・・)