私の映画玉手箱(番外編)なんということは無い日常日記

なんということは無い日常の備忘録とあわせ、好きな映画、韓国ドラマ、そして
ソン・スンホンの事等を暢気に書いていく予定。

家族の誕生

2006-10-29 16:00:50 | 映画鑑賞
韓国の春川。
ムン・ソリ演じる女性のもとに、オム・テウン演じる弟が、5年間音信不通だったにも関わらず、伯母さんのような嫁を連れて戻ってくる。
周囲には「除隊してからちょっと音信不通で・・・」と言葉を濁しているが、本当は除隊後、刑務所にも入っていたらしいのだ。
姉に甘えるだけ甘え、そして年上の妻と、年上の妻とも血の繋がらない小さい娘を残し「ちょっと行って来る・・・・」と二度と帰ってこないのだ。

またある日の春川。
コン・ヒョジン演じる日本語ガイドは恋人(リュウ・スンボム)の事が信じられず、母親が営む米軍相手の仕事も許せず、母親が不倫の末生んだ弟の存在も許せず、彼と別れ日本語ガイドとして仕事をする道を選ぶ。
けれど母親は幼い弟を残して死んでしまった。
身軽でなくなった彼女は日本語ガイドの仕事も出来ない。

そしてまたある日の電車の中。
「あなたいい人そうだから・・・」と若い男性に笑顔を向ける若い女性。
ポン・テギュ演じる若い男性は「軽い行動」の目立つ彼女の事がどうしても許せない。

ムン・ソリとオム・テウンが主演の映画だと思っていたので、オムニバスだと分かった時にはちょっと驚いたのだが、その後3つの物語が繋がるような構成になっていたことにはもっと驚く。
見た目には時間経過を感じさせないような作りだったので、1話目と2話目が80年代の話で3話目がそれから約20年近く経った時代の話だとは簡単には気づかなかったのだ。
血の繋がりだけでなく、縁を感じながら20年を過ごす6人の物語。
血の繋がりを重視する韓国映画では、このような話は珍しいらしいが、日本やハリウッドでは、決して珍しい題材ではないだろう。
しかし、題材だけに頼ることなく、3つの話を続けていく方法は面白かった。
オム・テウン演じる弟は、去ってはいくけれど、新しい家族を残してゆき、そしてコン・ヒョジン演じる日本語ガイドは恋人を追い出すけれど、新しい家族を受け入れていくのだ。
誰かを捨てても、誰かに捨てられても、また自分のもとには誰かがやってきて、そして自分も誰かに必要とされていくのだ。

*****
上映後、監督とのティーチ・インあり。
ティーチ・インは質問者の意見から「そういう見方もあったのか」とはっとさせられることも多いし、監督の意図するところも聞けて非常に楽しい。
(勿論はずれなこともあり、「さっき観たでしょ!そんな質問するな!」と悪態をつきたくなる場合も多し。)
この映画上映後のティーチ・インは非常に充実していて楽しかった。
監督からは「常に誰かを探している映画。血の繋がりの無い人が家族として生きていくのに必要なのは、憐みと時間」という製作意図とも思われる話もあったし、ヒントになったのはラジオの投稿だったという話も面白かった。
(兄と兄嫁、そして兄の妹の三人で暮らしていたが、兄が交通事故で死んだ後も、妹も兄嫁は一緒に暮らし、今はともに80の大台に乗ったのだという。二人は家族と呼んでもいいと思うのだが、血の繋がらない二人が家族になるために必要だったものは・・・この話が最初の常に誰かを探している映画に繋がっていくのだ。)

何故舞台に春川を選んだのかという質問には、この映画は時間経過が大事だが、それを強調したくなかった。春川は20年前と殆ど雰囲気が変わらないし、ソウルに住んでいる人は春川に対して何かロマンティックな、何かあるんではないかという気持ちを抱いているので、この場所を選んだとの答えだった。

観客達は「なるほど」と頷いていたのだが、監督は「どうしてみただけで春川と分かったのですか?」と非常に不思議がり、(質問した人は、ハングルの分かる人だと思われる。一度画面でハングルの住所が写る箇所があったのだ)「春川はヨン様のドラマで有名になったからでしょうか?」とちょっと勘違いするような場面もあり。
ヨン様ネタも入れないと不味いと思ったのか「あの場所も冬のソナタのロケ地のそばです」などと何度か話していたが、残念ながら観客からは特に感嘆の声も上がらず。

コン・ヒョジンの職業を日本語ガイドに設定したことについては「80年代日本は一番近くて、でも一番遠い国だった。韓国もそしてアメリカも嫌いになっていた彼女にとって、一番手っ取り早く、しかも遠いと思える国が日本だったのだ。」という説明も説得力があったし、オム・テウンとコ・ドゥシム演じる20歳も年の離れたカップのキャスティングについての話も聞けて面白かった。
監督のクム・テヨンがコ・ドゥシムのことを「コ・ドゥシム先生」と呼んでいたのも面白かった。
それまでヤクザや社長など、強いといわれる男を演じていたオム・テウンも「こんな役は初めて・・」とこのいい加減な弟役を楽しんで演じていたらしい