MITスローン・スクールのイノベーション・マネジメントのエリック・フォン・ヒッペル教授が、DEMOCRATIZING INNOVATION(民主化するイノベーションの時代)と言う著書で興味深いイノベーション論を展開している。
製品やサービスのイノベーションは作り手であるメーカーが作り出すものと考えられているが、実はそれだけではなく受け手であるユーザー自身もイノベーションを起こす。その能力と環境が益々増えている。著者は、この傾向をさしてイノベーションの民主化と言うのである。
要するに、イノベーションは、メーカー自身の専売特許ではなくて、ユーザーが必要に応じて作り出すことが多くなってきたと言うことである。
この場合のイノベーションは、製品の改良とか進化とかと言った意味であるが、ユーザーがメーカーから買った製品を、自分自身でドンドン改良したり進化させて付加価値を付けている。
この民主化過程は、ソフトウエアだけではなくハードウエアでも生じており、コンピューターやITの不断の進歩に伴って、ユーザーの貢献度合いが益々高まって来ている。
多くのユーザーが自ら設計することによって自分のニーズにピッタリ合った製品を作り出すことが益々容易になり、このユーザーによるイノベーションの社会的貢献は大きい、と言うのである。
ユーザー・イノベーションの多くは、重要な市場動向に関して多数のユーザーに先行して、自らのニーズを充足させる高い効用のソリューションを見つけ出す「リード・ユーザー」によって引き起こされることが多い。
ユーザーにとって、自分で作るか購入するかについては、エージェンシー・コストなどコスト要因が働くが、イノベーションや問題解決の喜び、イノベーションを通じての学びなどインセンティブもある。
ユーザー・イノベーターは、自分にとっても最適であると同時に唯一の選択肢でもあり、自分の名声の高まり、伝播による正のネットワーク効果などを考えて、自分の開発したイノベーション情報を、殆ど総て、オープンソース、無料公開している。
また、自分達の活動を組み合わせ、レバレッジを利かせる為に、協力関係を志向してメーカーを含めたイノベーション・コミュニティを作る。
このようにユーザーが無料で公開するイノベーションが存在することは、社会福祉的にもプラスではあるが、現状の法体系は、知的財産の保護の観点等からもメーカー有利になっており、ユーザー・イノベーターを犠牲にしないような政策立案が必要である。
ユーザーは、全員が自由に利用できる情報の集合体「情報コモンズ」を共同で構築し、現在は知的財産で保護されている情報の代わりに情報コモンズの情報を利用する。
このようにしてユーザー・イノベーターは、無料公開された代用品を利用することによって知的財産法の制限の周辺で効果を上げている。
この典型的な例は、マイクロソフトとリナックスの関係であろう。
ソフトウエアとハードウエアの着実な進歩、イノベーション用の簡便なツールや部品が入手しやすくなっているという環境、そしてイノベーション・コモンズへのアクセスが着実に大きな広がりを見せている結果として、ユーザーが自らイノベーションを起こす能力は急激かつ急速に進歩している、と指摘する。
イノベーションは、益々、民主化する、と言うことである。
デジタル化の進行によって、最近では、まったくの小企業が部品を集めて薄型のデジタルTVを組み立てて破格の格安値段で販売している。
また、自分好みの自分だけのパソコンを組み立てる講習会が開かれていて、高校生が自分用のパソコンを組み立てている。
デルによるパソコンの革新的な販売戦略にビックリしたのは、ほんの少し前だが、自動車でも、カメラでも、何でも器用なユーザーは昔から自分で製品を改良して楽しんでいた。
現実には、日本の工業製品の大半は、電気製品を筆頭に製品のバリエーションは豊かで選択肢は沢山あるように思われるが、大概、帯に短し襷に長しで、メーカーのお仕着せであり、満足できたためしがない。
このヒッペルのデモクラタイジング・イノベーションは、メーカーに極めて重要な製品開発と営業販売に関する重要な示唆と戦略を与えている。
ユーザーと如何に対するのか、ユーザー・イノベーションを企業戦略に如何に取り込むのか等々、メーカーは、ユーザーあっての製品及びサービスの販売であると言う原点に立ち返って経営戦略を打て、と言うことであろうか。
(追記)椿は、玉之浦
製品やサービスのイノベーションは作り手であるメーカーが作り出すものと考えられているが、実はそれだけではなく受け手であるユーザー自身もイノベーションを起こす。その能力と環境が益々増えている。著者は、この傾向をさしてイノベーションの民主化と言うのである。
要するに、イノベーションは、メーカー自身の専売特許ではなくて、ユーザーが必要に応じて作り出すことが多くなってきたと言うことである。
この場合のイノベーションは、製品の改良とか進化とかと言った意味であるが、ユーザーがメーカーから買った製品を、自分自身でドンドン改良したり進化させて付加価値を付けている。
この民主化過程は、ソフトウエアだけではなくハードウエアでも生じており、コンピューターやITの不断の進歩に伴って、ユーザーの貢献度合いが益々高まって来ている。
多くのユーザーが自ら設計することによって自分のニーズにピッタリ合った製品を作り出すことが益々容易になり、このユーザーによるイノベーションの社会的貢献は大きい、と言うのである。
ユーザー・イノベーションの多くは、重要な市場動向に関して多数のユーザーに先行して、自らのニーズを充足させる高い効用のソリューションを見つけ出す「リード・ユーザー」によって引き起こされることが多い。
ユーザーにとって、自分で作るか購入するかについては、エージェンシー・コストなどコスト要因が働くが、イノベーションや問題解決の喜び、イノベーションを通じての学びなどインセンティブもある。
ユーザー・イノベーターは、自分にとっても最適であると同時に唯一の選択肢でもあり、自分の名声の高まり、伝播による正のネットワーク効果などを考えて、自分の開発したイノベーション情報を、殆ど総て、オープンソース、無料公開している。
また、自分達の活動を組み合わせ、レバレッジを利かせる為に、協力関係を志向してメーカーを含めたイノベーション・コミュニティを作る。
このようにユーザーが無料で公開するイノベーションが存在することは、社会福祉的にもプラスではあるが、現状の法体系は、知的財産の保護の観点等からもメーカー有利になっており、ユーザー・イノベーターを犠牲にしないような政策立案が必要である。
ユーザーは、全員が自由に利用できる情報の集合体「情報コモンズ」を共同で構築し、現在は知的財産で保護されている情報の代わりに情報コモンズの情報を利用する。
このようにしてユーザー・イノベーターは、無料公開された代用品を利用することによって知的財産法の制限の周辺で効果を上げている。
この典型的な例は、マイクロソフトとリナックスの関係であろう。
ソフトウエアとハードウエアの着実な進歩、イノベーション用の簡便なツールや部品が入手しやすくなっているという環境、そしてイノベーション・コモンズへのアクセスが着実に大きな広がりを見せている結果として、ユーザーが自らイノベーションを起こす能力は急激かつ急速に進歩している、と指摘する。
イノベーションは、益々、民主化する、と言うことである。
デジタル化の進行によって、最近では、まったくの小企業が部品を集めて薄型のデジタルTVを組み立てて破格の格安値段で販売している。
また、自分好みの自分だけのパソコンを組み立てる講習会が開かれていて、高校生が自分用のパソコンを組み立てている。
デルによるパソコンの革新的な販売戦略にビックリしたのは、ほんの少し前だが、自動車でも、カメラでも、何でも器用なユーザーは昔から自分で製品を改良して楽しんでいた。
現実には、日本の工業製品の大半は、電気製品を筆頭に製品のバリエーションは豊かで選択肢は沢山あるように思われるが、大概、帯に短し襷に長しで、メーカーのお仕着せであり、満足できたためしがない。
このヒッペルのデモクラタイジング・イノベーションは、メーカーに極めて重要な製品開発と営業販売に関する重要な示唆と戦略を与えている。
ユーザーと如何に対するのか、ユーザー・イノベーションを企業戦略に如何に取り込むのか等々、メーカーは、ユーザーあっての製品及びサービスの販売であると言う原点に立ち返って経営戦略を打て、と言うことであろうか。
(追記)椿は、玉之浦