熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

イノベーションと経営(10)・・・発明が生まれる時(その3)

2006年04月06日 | イノベーションと経営
   シュワルツはチャーチルの「成功は情熱を失わずに失敗から失敗へと突き進むことによって成し遂げられる」と言う言葉を引用して、EMBRACING FAILUREと言う章を設けている。
   失敗を糧にすると訳されているが、失敗を抱きしめる、失敗を機会として乗ずる、失敗に取り組む、そんな感じを総て包含した言葉であろうか。

   稀有な発明家アップルコンピューターⅡのスチーブ・ウォズニアックと携帯用小型透析器「ホームチョイス」やロボットのディーン・カーメンが会話の中で、「自分達の失敗を洗いざらい披露し、どんなに失敗を望んでいるかを得々と話し、実験室での数々の失敗と惨憺たる結果について自慢話をしていた」と言うのである。
   カーメンは、失敗すかも知れないと思うとかえって勇気が湧くと言っているが、発明家にとっては「失敗はやる気の源」なのであろう。

   一人用電動立ち乗り二輪車「セグウェイ」を開発したカーメンの会社DEKAでは、ミスを許す社風があるばかりではなく、独創的なアイデアに溢れた失敗に対して奨励制度を設けている。
   王子様に会うためには沢山カエルにキスしなければならないと言う童話にヒントを得て「カエル賞」と命名し、エンジニアに思い切った失敗を奨励しているのである。

   ところで、今日の日経の一面コラム「春秋」に、都庁から虎ノ門の官庁街に行くのにあらゆる交通機関の中で、一番早いのは自転車だったと書いてあったが、全人口の半分以上が住む都会地で、カーメンの「歩く4倍の速さで移動出来て、歩行者よりもほんの少し多めの場所しか取らないセグウェイ」は、素晴しい発明でありイノベーションではないであろうか。
   充電式のバッテリーをスターリングエンジンに変えるなど改良中のようだが、実用化すれば世の中が変わる。

   この失敗の重要性については、別な面からメジチ・インパクトのヨハンソンも触れている。
   画期的なイノベーターは、素晴しいモノを作り出しもするが、玉石混交、膨大な量のアイデアを生み出しもすると言うことである。
   例えば、演奏されるバッハやモーツアルト、ベートーヴェンの曲は全体の3分の1程度に過ぎないし、日の目を見たピカソの絵も極一部だし、アインシュタインの論文など殆ど引用さえされないと言うのである。

   UCDのD・サイモントンは、成功と多作との関係について、「イノベーターは、成功したから多くを生み出すのではなく、多くを生み出すから成功するのだ」と言っている。
   すなわち、量と質の間には相関関係があって、発明やイノベーションを生み出すためには、継続してアイデアを出し続けることが必須なのであろう。
   とにかく、失敗、失敗、失敗の連続で、あらゆる可能性を追求・模索しているうちに何時かは成功すると言うことであろう。
   
   クラシック音楽の作曲家が数多くの傑作を生み出した時期は、沢山の失敗作を生んだ時期でもあり、ある人が画期的なアイデアを生み出したからと言っても、同じ事をやってのける確率が高まる訳ではないと言う。
   要は、下世話な表現だが、「下手な鉄砲数打ちゃ当る」と言うことでもある。

   本論とは全く離れてしまうが、
   有名画家の作だからと言っても、駄作である確率も高いのだから、十分に吟味もせずに有難がって買う人はバカを見ると言うことも言えると言うことであろう。
   ネームヴァリューだけで価値を持つ世の中、考えて生きなければならないと言うことでもある。

(追記)椿は、ワイルド・ファイア
コメント
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