熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

手塚雄二―花月草星展・・・映像のような印象的な日本画

2006年04月26日 | 展覧会・展示会
   日本橋高島屋で、「手塚雄二―花月草星展」が開催されている。
   絵を保護する為に照明が落とされているので会場は暗い。そのために、暗い画面から、強調された水や波や花月風鳥だけが鮮やかに浮彫りにされて目に飛び込む。

   会場に入って、まず、目に付く印象的な絵は、「星と月と」で、ブッシュ様の荒野で低いアングルから夜空を見上げるので、星は左に月は右に地面を這うように輝いていて、楠木様の茂った木が被さるように上空半ば以上を覆っている。
   「海音」も豪快な逆巻く波を描いた絵で、壁一面に広がるシネマスコープの大作。ドラクロアの海の絵とは違って、鋭角的な激しい波で、右手の波は激しく盛り上がって白い飛沫をあげており、右手の波は遠くの方でめり込み雲間の夕日を浴びて輝いている。激しい海音が耳を劈くような、そんな激しい絵である。

   面白かったのは、襖8面分の大作「雷神雷雲」と同じ大きさの「風雲風神」で、雷神が右、風神が左で16面繋ぐと凄い風神雷神図になる。殆ど顔だけの凄まじい形相をした雷神は激しい稲妻を発し、風神は大小四角の金銀の風を噴出し画面真ん中でぶつかり合う。
   俵屋宗達の屏風図を筆頭に絵画や彫刻などで風神雷神が結構あるが、幾ら厳つく作られていても何となく親しみを感じてしまうが、手塚雄二の絵は、不気味なほど激しい。

   女性を描いた絵が3点あった。
   大学卒業創作が「夢模様」。菩提樹の木の前に頭を左に横向きのインド象が居て、その背に正面を向いて赤毛の女が横すわりしていて右手に白い大きな布の端を握り締めて下に垂らしている。その白い布が正面下に置かれた寝椅子を覆っていて、その上に右手を頭にして青いドレスの女がオランピアスタイルで横たわり右手にかかげた鏡を覗き込んでいる。
   寝椅子の上には、赤い柱時計が2体、秤と杖が置かれていて、女の横たわる寝椅子の反対側の足元の白布の下から誰かの下向きの足が2本のぞいている。
   何が夢模様なのか、不思議な絵である。
   他の2点は、白川女の様に少女の頭上にのせた盆の上に、シロフォン、ピアノ、風船、剣玉、お面、秤等々を描いた絵の「少女季」。そして、迷路の庭をバックにイスに女が座って前のテーブルには、ロバ、豚、亀、鶏、羊、カンガルーが入った紙袋が並べてある「迷宮」。これも寓意的で象徴的な不思議な絵である。

   大半は風景画であったが、雰囲気が東山魁夷の絵と良く似ていて、幾分か光の部分が印象的に強調されている絵だと言えば言えなくもないかもしれない。
   私の第一印象は、光と影のバランスが絶妙で、雰囲気がモノクロに似た風景写真を見ている様な感じがした。空気の匂いや音が聞こえてくるような、そんな感じもする。
   コローの絵のように決して明るい感じの風景画ではなく、何処かくすんだ、しかし、胸に沁みて強烈な印象を残す絵である。

   昨年の院展出品作でポスターにも使われている「華」であるが、暗くくすんだ花束の真ん中の白い百合の花一輪だけが輝いているだけで、美しさも華やかさもない絵だが、この白い百合がいつまでも気になる、そんな不思議な絵である。

   赤いヤブツバキを画材にした掛け軸が展示されていたが、やはり、印象が暗い。
   実際には、白日の下では、絵の印象は大分違うのかもしれないが、会場の照明が適切であったのかどうか分からないが、絵葉書や図録の方が色彩や細部が良く分かる、そんな展示会であった。
   
コメント
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