熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

歴史的建造物がそのまま生活に生き続けるヨーロッパ

2006年06月03日 | 海外生活と旅
   この口絵写真の建物は、イギリスのカンタベリー(ケント州の歴史都市で英国教会の主教座のある所で、カンタベリー物語のチョウサーやベケットでも有名)の旧市街にある。
   一階は、画材や文具などを売っている店で、なかなかシックであるが、上階は住宅であろう。
   柱は曲がっていて、支柱で支えてはいるが、地震がない所為であろうか、しっかり立っていて、雰囲気がある。
   このように柱が傾いたり、家が歪になって立っている建物はイギリスのみならずヨーロッパには多い。
   アムステルダムの住宅など、傾いて前面にせり出し、一番上の5階の窓から外を覗くと、通りを越えて真下に運河が見えるなどと言った所もある。

   上に行くと建物が張り出しているが、これは、汚物を上階から道路にぶっちゃけるので、通りの人が被らないようにするためである。
   おちおち道の真ん中など歩けなかったのである。

   ハリー・ポッターの映画で見るようにイギリスには古くて不気味な建物が多いのだが、兎に角、幽霊が出てくると言われる古い住宅ほど資産価値が高い。
   不動産屋の物件案内に堂々と幽霊出没が明示されているし、古いホテルなど幽霊が出ることを宣伝にしており、廊下やロビーに幽霊の絵まで飾られているのだが、日本人の私には悪趣味にしか思えない。

   シェイクスピアの故郷ストラットフォード・アポン・エイボンのシェイクスピアホテルなど古いホテルには、床の傾いだ部屋がまだ残っていて、夜、スワン座でマクベスなど観劇して帰ってきてそんな所で一夜を過ごすと、タイムスリップ感覚間違いない。
   部屋の名前まで総てシェイクスピア戯曲縁の固有名詞なのである。

   ヨーロッパの田舎町も含めて、随分歩いてみたが、何百年も経っている古い館やシャトーが古城ホテルになっていて、素晴しい旅情を醸し出してくれるのだが、大概、人里離れた所にあるので都会生活に慣れた人間には少し寂しい。
   旧市街の古いホテルは比較的こじんまりしていて、床の傾きやドアの傾ぎなどは序の口で、上階の床を歩く客の足音で眠れないこともあるが、気にしなければ人の温もりを感じさせてくれる。
   ザルツブルグやローテンブルグ等の騎士の館の古いホテルも、重厚な味があってなかなか良い。
   ヨーロッパの古くて立派なホテルの客室は、広くて天井が非常に高くて、慣れないので落着かない。
   折角の機会だからと思って、出張の時も、自腹を切って色々なホテルを渡り歩いたが、古いだけの本当の安宿を除いて、歴史建造物のような古いホテルに宿泊した時には、悪い印象は殆どなかった。
   
   私の住んでいたキューガーデンの家は、100年以上は遥かに経っている古い家で、二重サッシがあたり前の日本では考えられないけれど、窓など立て付けが悪くてスムーズに動かず、エネルギー効率は悪かったが、自由に建物に手を入れられるのかどうか分からなかった。
   ロンドンの別な所に居た時は、隣の家が改築するのに役所が図面を送ってきて住人の私に賛否を聞いて来た。
   オランダなどは、立ち木1本切るのに許可が必要だったし門扉を広げて駐車スペースを新設するなどもっての他、窓枠の色は白と決まっていたし、歴史的建物でもないのに喧しかった。
   それでありながら、モンドリアン風の派手なカラーの家を認可したり、四角や三角がひっくり返ったようなデザインの家を建てさせている。
   
   小泉首相が、今日は会津を訪問とか、退任間際になって歴史の街並を歩いているようだが、歴史の風雪に耐えた建造物や街並には、特別な懐かしさとゆかしさがあって心を豊かにしてくれる。
   それはヨーロッパでも日本でも同じだと思うが、何故か、日本の建物は神社仏閣を別にすれば寿命が短すぎるような感じがするのは何故であろうか。

   
   
コメント
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