熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

ソニーはイノベーターか・・・新しい一眼レフα100

2006年06月09日 | イノベーションと経営
   コニカ・ミノルタの一眼レフを継承したソニーが、新しい一眼レフα100を発表し、来月から発売する。
   画素数字は上がっているが、手ブレ補正機能など主な仕様はミノルタ機の継承で新鮮味はなく、コンシューマーエレクトロニクスの雄ソニーが、初めてデジカメで、キヤノンやニコンと対等に勝負出来る門出としては消極的ではなかろうか。

   最近のデジカメの進歩は著しくて、正に日進月歩で、いくら高級な一眼レフカメラでも発売後1年も経てば、安い後継機に追い討ちを掛けられて市場価値を失ってしまう。
   話題を播いたニコンD200さえ、発売数ヶ月なのに、すでに市場価格は20%近くダウンしている。
   1機種が10年以上も王座に君臨し続けていた銀塩カメラ時代のキヤノンEOSやニコンF系統のフラッグシップ・カメラと比べれば今昔の感である。

   イノベーションの大家であるクレイトン・M・クリステンセンは、この技術の異常な進歩について、面白い分析をしている。
   (持続的イノベーションと破壊的(パラダイム破壊型)イノベーションと区別して、非常に興味深いイノベーション論を展開しているのだが、詳述は止めて、ここでは論点だけに絞りたい。)

   企業が技術革新をする場合、そのスピードは、顧客の生活が変化するスピードを遥かに超えていて、その製品は次第に品質過剰になって行く。
   この品質過剰が高じて行くと、商品の日常品化、すなわち、企業がその製品やサービスを独自に特徴づけようと努力しても無駄で利益を上げられなくなってしまうプロセスに入る。
   もし満足度をこのように過剰にする動きがなければ製品は決して成熟することはないし、顧客は、優れた製品にたいして喜んで高い金を払うのだが、現実には、余程のプレミアム商品ではない限り、企業の限界利益は下落し続ける。
   極論すれば、最も初歩的なEOS Kiss Digitalでさえ、機能が充実し過ぎていて、セミプロ級のマニアでさえも完全に機能を活用し得ていないのではなかろうか。

   製品の機能性と信頼性が満足の行く水準に達すると、利益を上げるために、企業が次に競争を仕掛ける側面は、使いやすさ、利便性、そして、顧客が如何に自分好みに製品を整備できるか(カスタマイズ)になり、究極は、価格競争に集約されてしまう。
   果てしない価格競争で、トップ集団以外は疲弊して脱落せざるを得ないと言うことになる。
   今のデジカメ市場は、正にクリステンセンの言うこの現状にあるのではないであろうか。
   
   ソニーの新一眼レフα100は、コニカミノルタのαSweet Digitalとそれほど変らないし、先行のニコンD50やキヤノンEOS Kissと比べても、画素数や手ブレ補正機能以外は殆ど変らないし、これらの競合機は、既に価格が異常に下がっていて、勝ち目があるとは思えない。
   ソニーのネイムバリューと珍しさで当初は売れるかも知れないが、精精新規参入のご祝儀相場程度に終わるのではないかと思てしまう。
   もっとも、今後発売予定のソニーの追求する高級一眼レフ・カメラとカール・ツアイスと共同開発する交換レンズ群には大いに期待をしている。

   デジカメは、IT革命とデジタル化の進行によって既にパソコンの周辺機器に成り下がって、殆どコモディティ化してしまっている。
   それでも、クリステンセンのイノべーーション理論に従えば、ソニーにとっては、自己のコア・ビジネスにおける製品は、最先端の技術を搭載したダントツの製品でなければならないのである。
   ウォークマンを世に出したソニーがiPodで、アップルに完全に水を空けられ、薄型TV Braviaで、多少市場占拠率を回復したが、これも、ソニーのブランド力の範囲であり、ストリンガー態勢に入ったが、業績回復は果果しくはない。
   クリステンセンが、唯一、イノベーションを持続し続けた連続破壊者だと言って賞賛したソニーも、もう20年近く前に、イノベーターとしての地位を放棄してしまっていると言うのである。
   それ以降、顧客をワクワクさせる様な商品を開発していないし、クリステンセンの言う市場支配者である大企業は、後続のイノベーターに駆逐されて、永遠にその復活はあり得ないと言う理論をソニーは地で行っているのであろうか。

   ミノルタの素晴らしいカメラ技術とソニーのITとエレクトロニクスの技術を融合して、他の追随を許さないような素晴らしい一眼レフ・カメラを生み出してくれることを期待している。

 
   

   
   
   
   
コメント
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