H.シュミットの「ヨーロッパの主張」の中で、お荷物になった対米関係について論じている一方、EUにおける大国フランスとイギリスとに対するドイツとの関係を論じながら、両国のEUでの位置づけについて面白いことを語っている。
要は、フランスを持ち上げてフランスあってのEUであり、イギリスはいつもEUにとってブレーキとなっていると言うことを言っているのだが、最初の思い入れと違って、少しづつイギリスに失望してフランスに接近していく過程が面白い。
EUに加盟すると言うことは国家主権の一部を放棄すると言うことを意味するのだが、これをイギリスは嫌って、ユーロにも入っていない。
島国と言う地理的条件のため1066年以来外国からの侵入を受けず、強力な隣国もなく、議会制民主主義や個人の主権の明文化など独自の政治体制や、産業革命を主導するなど強力な経済社会を確立して、全地球に大英帝国の名を轟かせた。
ヨーロッパ大陸では、力の均衡が保たれておれば良かったのだが、ECの進展に伴って大陸での英国の影響力が失われてしまうのを危惧して、望みもしない展開を阻止すべく口を挟む為に加盟を求めた。
従って、イギリスはEU機関の権限の拡大に対して常に反対してきたが、この拒否と妨害色に彩られた英国の基本方針は、政権が変わろうと変わらないに英国人の基本的な考え方だと言う。
従って、力が拡散されるので多数の新規加盟国を歓迎するなど、対EUに対する英国のこのような態度では抜本的な変化は期待できないと言う。
チャーチルが最初にヨーロッパ共同体を推進めたし、英国人の優秀さと歴史上の実績を賞賛し、そのプラグマティズムに賛同し、ヨーロッパ共同体の成功は英国の貢献あってこそとと長年確信していたのだが、この現実を知ってからは、幻想に過ぎないことを悟って痛く失望したと言うのである。
この英国加盟に対しては、米国べたべたのイギリスが加盟すると、共同体のフランスも米国の影響にさらされるのでドゴールは強力に反対した。
もっとも、東西ドイツの統一に対しても、ドイツの影響力の強化を恐れて、サッチャーもミッテランも反対した。
外交などと言うものはそんなもので、国益優先で自国の利害しか考えていない。そう考えれば、日本の今回の安保理常任理事国入りの画策など子供の仕事に過ぎなかったことが良く分かる。
ところが、シュミットが首相の時に、ジスカールデスタンが登場した。
フランスがドイツに優ると言う考え方を捨てた最初の仏大統領で、戦略的利害の為にもドイツとの長期的友好関係が大事であり、ECとの深い繋がり抜きには考えられないと明言した。
この二人の両首脳の蜜月時代が、独仏を核にECが発展を遂げた時期であるが、アウシュビッツ等でのナチの犯罪を払拭する為にも、ドイツにはないフランスの国際法カード、条約カード、核カードが重要であり、フランス人の理解と政治的主導とヨーロッパをリードする力が必須だったのだと言うのである。
フランスの政治家は、ヨーロッパ共同体の成功を誇りに思うと良いとまでシュミットは言う。
このEUでのドイツとフランスの関係、そして、イギリスのEUでの位置づけを考えると、何となく、アジアにおける日本の位置づけが分かってくるような気がする。
戦争に対する罪についてはドイツの姿、島国外交としてはイギリスの姿が、他山の石の役割を果たしてくれているのではないであろうか。
ミッテランは、ヨーロッパのアイデンティティについても語っている。
私は、有名な政治家が「ヨーロッパは多様な文化や民族の寄せ集めで、一つである筈などない」と言っていたし、ある高名なアーキテクトが「キエフからダブリンまでヨーロッパは一つだ」と言っているのを聞いたが、同じイギリス人でも全く考え方が違う。
アジアが一つだとは思わないが、一番襟を正して将来を見越さなければならない日本人が、靖国にかまけてアジアの未来について何のヴィジョンも持ち合わせておらず、そして、何のリーダーシップも発揮できないで居るこの悲しい現実。
例えば、中国やインドに対して、日本の世界に冠たる環境保全やエネルギー・セイビング技術を提供することによって、アジアの荒廃を守る、そんな使命を果たせないのであろうか。
要は、フランスを持ち上げてフランスあってのEUであり、イギリスはいつもEUにとってブレーキとなっていると言うことを言っているのだが、最初の思い入れと違って、少しづつイギリスに失望してフランスに接近していく過程が面白い。
EUに加盟すると言うことは国家主権の一部を放棄すると言うことを意味するのだが、これをイギリスは嫌って、ユーロにも入っていない。
島国と言う地理的条件のため1066年以来外国からの侵入を受けず、強力な隣国もなく、議会制民主主義や個人の主権の明文化など独自の政治体制や、産業革命を主導するなど強力な経済社会を確立して、全地球に大英帝国の名を轟かせた。
ヨーロッパ大陸では、力の均衡が保たれておれば良かったのだが、ECの進展に伴って大陸での英国の影響力が失われてしまうのを危惧して、望みもしない展開を阻止すべく口を挟む為に加盟を求めた。
従って、イギリスはEU機関の権限の拡大に対して常に反対してきたが、この拒否と妨害色に彩られた英国の基本方針は、政権が変わろうと変わらないに英国人の基本的な考え方だと言う。
従って、力が拡散されるので多数の新規加盟国を歓迎するなど、対EUに対する英国のこのような態度では抜本的な変化は期待できないと言う。
チャーチルが最初にヨーロッパ共同体を推進めたし、英国人の優秀さと歴史上の実績を賞賛し、そのプラグマティズムに賛同し、ヨーロッパ共同体の成功は英国の貢献あってこそとと長年確信していたのだが、この現実を知ってからは、幻想に過ぎないことを悟って痛く失望したと言うのである。
この英国加盟に対しては、米国べたべたのイギリスが加盟すると、共同体のフランスも米国の影響にさらされるのでドゴールは強力に反対した。
もっとも、東西ドイツの統一に対しても、ドイツの影響力の強化を恐れて、サッチャーもミッテランも反対した。
外交などと言うものはそんなもので、国益優先で自国の利害しか考えていない。そう考えれば、日本の今回の安保理常任理事国入りの画策など子供の仕事に過ぎなかったことが良く分かる。
ところが、シュミットが首相の時に、ジスカールデスタンが登場した。
フランスがドイツに優ると言う考え方を捨てた最初の仏大統領で、戦略的利害の為にもドイツとの長期的友好関係が大事であり、ECとの深い繋がり抜きには考えられないと明言した。
この二人の両首脳の蜜月時代が、独仏を核にECが発展を遂げた時期であるが、アウシュビッツ等でのナチの犯罪を払拭する為にも、ドイツにはないフランスの国際法カード、条約カード、核カードが重要であり、フランス人の理解と政治的主導とヨーロッパをリードする力が必須だったのだと言うのである。
フランスの政治家は、ヨーロッパ共同体の成功を誇りに思うと良いとまでシュミットは言う。
このEUでのドイツとフランスの関係、そして、イギリスのEUでの位置づけを考えると、何となく、アジアにおける日本の位置づけが分かってくるような気がする。
戦争に対する罪についてはドイツの姿、島国外交としてはイギリスの姿が、他山の石の役割を果たしてくれているのではないであろうか。
ミッテランは、ヨーロッパのアイデンティティについても語っている。
私は、有名な政治家が「ヨーロッパは多様な文化や民族の寄せ集めで、一つである筈などない」と言っていたし、ある高名なアーキテクトが「キエフからダブリンまでヨーロッパは一つだ」と言っているのを聞いたが、同じイギリス人でも全く考え方が違う。
アジアが一つだとは思わないが、一番襟を正して将来を見越さなければならない日本人が、靖国にかまけてアジアの未来について何のヴィジョンも持ち合わせておらず、そして、何のリーダーシップも発揮できないで居るこの悲しい現実。
例えば、中国やインドに対して、日本の世界に冠たる環境保全やエネルギー・セイビング技術を提供することによって、アジアの荒廃を守る、そんな使命を果たせないのであろうか。