熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

グローバル最強企業のM&A攻撃・・・ニューズウイーク

2006年10月07日 | 経営・ビジネス
   ニューズウイーク誌10月11日号で「グローバル最強企業ランキング」が特集されている。
   日本の経済や経営誌と違って、全く異なった視点からインターナショナルなビジネス・ジャーナリストが書く記事であり、日本的なバイアスがかかっていないので面白い。

   売上高ではなく、営業利益でランク付けしているのだが、同時に、M&Aを意識してか、20位までの時価総額とお金を溜め込んでいる会社をランキングしている。
   時価総額が大きければ大きいほど、他企業を買収する能力があり、キャッシュ・リッチであればあるほど、M&Aの標的になる可能性が高いのである。
   その意味では、先般イギリスの会社が狙っているとして噂の流れた日本の超優良企業・武田薬品は、医薬・バイオ部門では第14位で、トップのファイザーやJ&J、グラクソ・スミスクライン等と比べて時価総額は勿論のこと規模がかなり小さいのだが、157億ドルと言う世界第3位の巨額なネットキャッシュを保有しており、正に、ハゲタカの格好のM&Aのターゲットになり得ると考えてもおかしくない。

   ネットバブルの後遺症で巨額の収益を内部に溜め込んきた企業が、今や積極的に、設備投資と研究開発費の増加、自社株買戻しの拡大、M&A戦略等の遂行により拡大路線に走り出している。貯蓄から投資へのシフトである。
   原油高騰による増収増益で石油産業の一人勝ちの様相を呈しているが、原油価格も沈静化の傾向にあり、積極的な他企業の成長戦略を好感して市場は、長期的に収益を伸ばすのは石油以外の業界の方が大きいと看做している。
   これからは、長期的な成長と短期の利益の正しいバランスをとって競争を勝ち抜く企業が勝者となる。
   以上が、トム・エマーソンの総括した前置きで、この視点から各業種別に面白い企業分析がなされている。

   日本企業で、営業利益が世界ランキングのトップ50位に入るのは、12位のトヨタ、26位のNTT,36位の日産自動車、37位のホンダと42位のNTTドコモだけであり、100位までには、キヤノン、新日本製鉄と東京電力が入っている。

   業種別分析で興味深いのは「自動車」部門で、タイトルが「デトロイトに勝ち目なし」。トヨタは向かうところ敵なし、アメリカ勢の完敗は時間の問題、と論じている。
   米メーカーの不振は自業自得で、トヨタはガソリン価格高騰を見越して燃費向上の技術に投資したが、アメリカ勢はガソリンを食う小型トラックやSUVに力を入れた。ガソリン価格の高騰でトラック・SUV需要は急落し、セダンは安い韓国車に敗北、退職金や年金コストの重圧で投資資金もままならず、GMなどトラックに社運を賭ける以外にないと言う。

   業種別分析の「エレクトロニクス」では、液晶のサムスンとプラズマの松下電器の攻防について書いている。42インチ以上の大型TVでも、液晶技術の向上によってプラズマに対抗出来るようになってサムスンの追い上げで松下が苦戦している、液晶の方が映像が上なので薄型TVの主役交代か、とアン・モンローが論じているが、どうであろうか。

   日本企業が論じられているもう一つの業種は「金属・鉱業」で、「新日鉄も食うか食われるか 新生ミタルと新日鉄が韓国ポスコを巡る買収合戦に追い込まれる可能性も」と論じられている。
   日本でも報じられていた様に、新日鉄は、日本の鉄鋼メーカーと株を持ち合い、ポスコとの提携拡大など買収対象にならないよう試みていると書いているが、再編成こそ鉄鋼価格を安定させる究極の方法であり、業界全体の利益につながる唯一の道であるとも論じている。
   食うか食われるか、安価な製品を供給するポスコは、新日鉄やミタルだけの買収対象ではなく、ロシアも中国も狙っているのだとも言う。
   昔、新日鉄が「鉄は国家なり」と豪語し、経団連会長の座を占め日本経済のリーダーであったのも今は昔になってしまった。
   
   何れにしろ、このニューズウイーク誌のGlobal Best 2006にランクインしている日本の企業は殆どの業種で皆無に等しいのだが、勿論、誌上で論じられてもいない。
   グローバル競争に晒されて、かなり国際競争力があると考えられている製造業でさえこの程度であるから、日本国内の規制や豊かな市場に守られてきた内需産業など熾烈な国際競争に太刀打ちできる訳がない。

   来年、愈々、外国企業が日本の子会社を通じて日本企業を買収する「三角合併」が解禁となる。
   村上ファンドの買収の比ではない程巨大なファンドや、時価総額何倍何十倍と言った巨大な同業のグローバル企業が、間違いなく日本の優良企業をターゲットにしてM&A攻勢をかけて来る。
   特に同業種の欧米企業にとって、将来性のある超有望なアジア市場を確保する為には、日本企業を傘下におさめてグローバル戦略を打つのは当然の選択肢であろう。
   イギリスのように、世界を支配するのもされるのも同じ次元で考えてウインブルドン現象を意に介さない国民ならイザ知らず、そのようなグローバライゼーションに、日本人の感覚として耐えられるのかどうか。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 

   
   
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする