熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

再び高校必修科目スキップ問題を問う

2006年10月29日 | 政治・経済・社会
   今日の日曜討論でも、高校の教育指導方針を逸脱した必修科目の未履修問題について議論されていた。
   しかし、奇異に思うのは、問題を引き起こしたのは、方針を逸脱した学校の校長等ガバナンスの当事者であるにも拘らず、一切、世間も役所も政治家もメディアも、校長が悪い、教師が悪い、と、言わないし、その罪を問おうともしないことである。
   当事者も世間も、校長や教師達が社会のルールを犯して悪いことをしたと言う認識に乏しく、必修逃れをした生徒達が可愛そうだ、救済しろと言う議論ばかりである。

   世間が糾弾しないから、校長も生徒の為に良かれと思ってしたことで、悪いとは思っていないし、生徒達には申し訳ないと詫びてはいるが、必要悪だったと言う程度の罪の意識しかない。
   まして、この必修科目スキップ問題は、現時点で、400校以上、関係する生徒は8万人をオーバーすると言われているから、全国規模に渡る大掛かりなものとなり、実際には今年に始まったことではなく以前から行われていた慣行だとも考えられるので、受験問題のみならず、高校教育全般の問題となり深刻である。
   しかし、こんなに幅広く大問題になると、結局、皆で渡れば怖くない赤信号、と言う形で決着する可能性が極めて高くなってしまう。

   この問題の背後には、文部科学省の学校教育に対する指導やガイダンス、あるいは管理監督に融通無碍と言うか好い加減なところがあって、確固たる方針や姿勢がなかったのかも知れない。
   しかし、私自身は、もっと根本的な原因は、日本の法律に対する官僚の姿勢にあるような気がしている。
   日本では、最近議員立法がかなり出てきているが、それでも、法律は官僚が作ることが多く、又、その法律が成立しても、官僚の自由裁量で運用されることがあり額面通りに法律が施行されないことがある。
   窓口規制や窓口指導などはその例だが、要するに、法律は法律だが、その解釈と運用は官僚の裁量によって左右されると言う慣例がずっと続いてきていたが、国民はこれを疑問にさえも思わなかった。
   このことが、日本人の遵法精神が希薄であることの一因ともなっているような気がする。

   法治国家として全くおかしいシステムだが、これは、長いものには巻かれろと言う役人に対する国民の姿勢と、ムラのオサに支配され統治されて来た古い社会構造を色濃く引き摺っていることで、これが、官製談合を含めた談合体質にも相通じている。
   従って、今回の必修科目スキップ履修の問題にしても、その曖昧模糊とした行政の範疇であるから、当事者も関係者も、適当なところで行政決着と言うか政治決着がつき、罪人が出ないように収まると思っている。

   今回、文科大臣だけが、まともに履修した高校生とずるを強いられた高校生との間のアンフェアを問題にしていたが、この問題を考える時に、欧米で一番基本的な価値観であるフェアかアンフェアかと言う価値判断が欠けている。
   更に、校長の犯した罪は、学生にアンフェアな学習指導を行ったのみならず、成績表や提出書類を虚偽記載するなどと、これも欧米人が一番嫌うウソをつき通してきた。倫理感覚の欠如である。
   別に、欧米人の価値観でモノを考える必要はないが、一寸、戦争直後に、マッカーサーに日本人は12歳だと言われたことを思い出したのと、グローバル時代に、臆面もなくアンフェアで嘘をついても意に介さない教育者に若者の教育を任せておいて良いのかと思ったのである。

   私自身は、現行の指導要領が適切であるかどうかについては問わないが、しかし、国家の基本姿勢として、学習指導要領と言う基本的な指針があって、そのルールに従って高等学校教育が行われるのは当然であると思っている。
   また、大学教育の大前提を体現した入試問題ならイザ知らず、入学者選考のための試験であるならば、その試験の為に、万一履修科目など高等学校教育の基本が歪められると言うことにでもなれば、これは本末転倒も甚だしいし、そうあってはならないと思っている。

   昔の日本は、暗黙の了解で上手く治まる社会的秩序があったような気がするが、これだけ大きく革命的に世の中が変化しグローバリズムが進展してくると、そのような力が働かなくなってきて、規範や規則、法律などで統べなくてはならなくなる。
   ところが、日本人の頭と性格姿勢がそれについて行けない、今、そんな過渡期にあるのかも知れないと言う気がしている。

   


   

   
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