OKI情報通信融合ソリューションフェア2006の特別講演セミナーで、尾陽木遇師(びようでぐし)九代玉屋庄兵衛のからくり人形の実演と面白い話を聞いた。
六本木ヒルズの40階で開催されていた電話で有名なハイテク企業OKIのフェアで、会場に山車からくりの人形が置かれてIT関連の最新技術セミナーが開かれていたのだが、日本の技術の奥深さを髣髴とさせる光景でもあった。
庄兵衛さんが実演したのは、「茶運人形」と「弓曳童子」の人形で、人形の着衣を脱がせてからくり人形のメカニズムを詳細に説明した。
茶運人形は、1796年に土佐のからくり師細川半蔵が著した「機巧図彙」から復元した人形で、客にお茶を運んで行き、客がお茶を飲んで人形の盆に返すと主の所に帰って来る。
からくり人形は、和時計が隆盛になってから、この時計のメカニズムを使って作り始められたようで、歯車やゼンマイを始めテンプなど正確に動きを伝え制御する仕掛けが上手く活用されている。
江戸時代に、からくり人形のメカニズムや作り方を著した書物が出ているが殆ど作出不能で、この茶運人形も含めて試行錯誤、苦心惨憺し、改良に改良を重ねて復元して来たのだと言う。
庄兵衛師は、自分自身は図面を描かずに、模型を作って試行錯誤直しながら工夫して人形を作るのだと言っていた。
現代の究極の職人岡野雅行氏と同じ手法である。
もっと複雑な「弓曳童子」は座っていて、前に置かれた矢立から右手で矢を一本ずつ引き抜いて、左手に持った弓に番えて弓を引き絞り、顔を左にある的の方向に向けて狙いを定めて矢を放つ。
正確に的を射抜くと、また、同じ動作を繰り返して4本の矢を打ち込む。
人形には10本以上の糸が垂れ下がっていて、2枚の歯車で伝えられた動きを正確に受け止めて淀みなく人形は動いている。
人形の乗っている金張りで朱塗りの漆の美しい箱を開けると、美しいメカニカルな機械の構造が現れて、その前でサルの人形が機械を操作しているように動いている。
実際には、箱の外に時計のぜんまいを巻く時の分銅と糸が垂れていて、少しづつ上に上がって行く。
二つの歯車は、カリンの板を8枚づつ繋ぎ合わせて、何年も乾かせて歪を抑えて歯を切っているのだが、木の正目が放射状になっていて実に美しい。
ゼンマイは、セミ鯨のひげを細長く切って薄く削って作ってあり4メートルの長さだと言う。
この弓曳童子の人形は、7種類の木と竹、鯨のひげ、糸だけで出来上がっていて5分間もあれば綺麗に分解出来るらしい。
人形の頭は、文楽人形と同じで、顔は能面のように見る角度によって表情が変わり、この人形は、丁度弓を番えて矢を射る瞬間に、一寸上を向く時が一番素晴らしい顔をするのだと庄兵衛師は説明して見せてくれていた。
衣装は、恐らく京人形などと同じ、或いは、能や歌舞伎の衣装と同じで錦を着ており、正に、このカラクリ人形そのものが貴重な日本の文化財である。
後で、名古屋万博で活躍したどんなに動いても南方向をずっと指し続けると言う「唐子指南車」の小型模型を操作していたが、兎に角、IT時代でコンピューターや半導体が操作してどんな機械をも自由に動かせる現代と違って、総て、動力を使わずにメカニックだけで動く機械からくりの素晴らしさには脅威さえ感じる。
この摺り合わせと匠の技が、日本の製造技術の原点でもあろうし、それに、世界に冠たる美意識を結集したような芸術品を創り出す日本人のモノ作りの素晴らしさを、このからくり人形が教えてくれるような気がして感激しながら、庄兵衛師の話を聞いていた。
山車の上で宙返りをしたり踊ったり演奏したりする麾振り人形もこのからくり人形の延長だが、これは、下にいる人間が紐を操って動かしている。
文楽人形と同じ原理だが、この日本方式と違って、ヨーロッパの方は、上に付いた糸を操作して下にぶら下がった人形を動かすマリオネットで、この手法の違いが面白い。
それに、日本は時計のメカニズムを活用してからくり人形を発展させたが、欧米は、オルゴールや蓄音機に発展させた。
モノづくり、機械作りの原点の一つは、時計のメカニズムであろうか。
正確な時間間隔と正確なピッチで同じ動作を繰り返すメカニックが如何に難しくて基本となっているのか、何となく分かったような気がしてきた。
六本木ヒルズの40階で開催されていた電話で有名なハイテク企業OKIのフェアで、会場に山車からくりの人形が置かれてIT関連の最新技術セミナーが開かれていたのだが、日本の技術の奥深さを髣髴とさせる光景でもあった。
庄兵衛さんが実演したのは、「茶運人形」と「弓曳童子」の人形で、人形の着衣を脱がせてからくり人形のメカニズムを詳細に説明した。
茶運人形は、1796年に土佐のからくり師細川半蔵が著した「機巧図彙」から復元した人形で、客にお茶を運んで行き、客がお茶を飲んで人形の盆に返すと主の所に帰って来る。
からくり人形は、和時計が隆盛になってから、この時計のメカニズムを使って作り始められたようで、歯車やゼンマイを始めテンプなど正確に動きを伝え制御する仕掛けが上手く活用されている。
江戸時代に、からくり人形のメカニズムや作り方を著した書物が出ているが殆ど作出不能で、この茶運人形も含めて試行錯誤、苦心惨憺し、改良に改良を重ねて復元して来たのだと言う。
庄兵衛師は、自分自身は図面を描かずに、模型を作って試行錯誤直しながら工夫して人形を作るのだと言っていた。
現代の究極の職人岡野雅行氏と同じ手法である。
もっと複雑な「弓曳童子」は座っていて、前に置かれた矢立から右手で矢を一本ずつ引き抜いて、左手に持った弓に番えて弓を引き絞り、顔を左にある的の方向に向けて狙いを定めて矢を放つ。
正確に的を射抜くと、また、同じ動作を繰り返して4本の矢を打ち込む。
人形には10本以上の糸が垂れ下がっていて、2枚の歯車で伝えられた動きを正確に受け止めて淀みなく人形は動いている。
人形の乗っている金張りで朱塗りの漆の美しい箱を開けると、美しいメカニカルな機械の構造が現れて、その前でサルの人形が機械を操作しているように動いている。
実際には、箱の外に時計のぜんまいを巻く時の分銅と糸が垂れていて、少しづつ上に上がって行く。
二つの歯車は、カリンの板を8枚づつ繋ぎ合わせて、何年も乾かせて歪を抑えて歯を切っているのだが、木の正目が放射状になっていて実に美しい。
ゼンマイは、セミ鯨のひげを細長く切って薄く削って作ってあり4メートルの長さだと言う。
この弓曳童子の人形は、7種類の木と竹、鯨のひげ、糸だけで出来上がっていて5分間もあれば綺麗に分解出来るらしい。
人形の頭は、文楽人形と同じで、顔は能面のように見る角度によって表情が変わり、この人形は、丁度弓を番えて矢を射る瞬間に、一寸上を向く時が一番素晴らしい顔をするのだと庄兵衛師は説明して見せてくれていた。
衣装は、恐らく京人形などと同じ、或いは、能や歌舞伎の衣装と同じで錦を着ており、正に、このカラクリ人形そのものが貴重な日本の文化財である。
後で、名古屋万博で活躍したどんなに動いても南方向をずっと指し続けると言う「唐子指南車」の小型模型を操作していたが、兎に角、IT時代でコンピューターや半導体が操作してどんな機械をも自由に動かせる現代と違って、総て、動力を使わずにメカニックだけで動く機械からくりの素晴らしさには脅威さえ感じる。
この摺り合わせと匠の技が、日本の製造技術の原点でもあろうし、それに、世界に冠たる美意識を結集したような芸術品を創り出す日本人のモノ作りの素晴らしさを、このからくり人形が教えてくれるような気がして感激しながら、庄兵衛師の話を聞いていた。
山車の上で宙返りをしたり踊ったり演奏したりする麾振り人形もこのからくり人形の延長だが、これは、下にいる人間が紐を操って動かしている。
文楽人形と同じ原理だが、この日本方式と違って、ヨーロッパの方は、上に付いた糸を操作して下にぶら下がった人形を動かすマリオネットで、この手法の違いが面白い。
それに、日本は時計のメカニズムを活用してからくり人形を発展させたが、欧米は、オルゴールや蓄音機に発展させた。
モノづくり、機械作りの原点の一つは、時計のメカニズムであろうか。
正確な時間間隔と正確なピッチで同じ動作を繰り返すメカニックが如何に難しくて基本となっているのか、何となく分かったような気がしてきた。