シカゴ商品取引所の場立ちをしていたと言う経済ジャーナリスト・テッド・C・フィッシュマンが、実際に中国のみならず世界を地道に歩いて得た極めて臨場感溢れる中国記「中国がアメリカを超える日 CHINA INC. The Next Superpower challenges America and the Other World 中国株式会社 次の超大国のアメリカ及び世界への挑戦、と言うべきか)を出版した。
原書で380ページほど、日本語訳で500ページ弱のかなりボリュームのある本だが、実際の現実世界の記述が多いので、冗長過ぎるきらいはあるが、兎に角、面白い。
今月の初旬のこのブログで、アメリカ企業の競争力強化戦略を追求したMITグローバル化研究チームの「グローバル企業の成功戦略」について書いたが、この本を読んでみると、別な違ったアメリカが見えてくる。
GMやデル等アメリカのトップ企業は、IT革命を活用して、工業製品をモジュール化して、最適生産を求めてグローバル市場にアウトソーシングして、膨大な利益を上げている。
しかし、これは一部の成功企業の場合であって、このアウトソーシングとオフショアリング戦略によって、アメリカ全土の製造業は、中国旋風に煽られて未曾有の苦境に陥って倒産に倒産を重ねて、この3年間、製造業での失業は経済全体の失業率の50倍に達し、更に長期化して疲弊した地域は回復の見込みさえないのだと言う。
CNN等の人気キャスター・ルー・ダブスは、連日、アメリカ人の雇用を外国に移す企業を裏切り者として攻撃しているが、このマニフェスト「アメリカ輸出」が、アイゼンハワーの産軍複合体批判以降最大の大資本・大企業への非難だと言うのである。
今回の中間選挙のブッシュ敗北は、イラク問題だけではなく、国民の経済不安が大きな比重を占めていたのであろう。
今回の民主党勝利によって、そして、アメリカ経済が不況局面に向かえば、元の切り上げを含めて中国への圧力が増し、保護貿易主義の台頭などアメリカの対外経済政策は大きく変らざるを得ないであろう。
アメリカ人労働者達は、自分達の不運の元凶は中国だと認識しており、その3分の1が、工場が中国に移転して職を失うかも知れないと不安を感じていると言うのである。
アメリカでは、『中国価格』、即ち、可能な範囲での最低価格と言う概念が闊歩していて、モジュール化を追及してアウトソーシングに特化したアメリカ企業の仕入れ担当者は、最高の品質と最低の価格(その大半が中華圏の製品)を求めて世界中を駆け回っており、価格競争について行けないアメリカ企業の供給先を片っ端から切って行くのだと言う。
アメリカでは、今、倒産したり製造を中止した会社の設備機械の叩き売りオークションをしている「産業オークション会社」がグローバル化を謳歌していて、その顧客の大半は、製造業を止めてアウトソーシングに切り替えたり、製造部門を中国などに移転している優良企業だと言うのである。
利益極大化等の経済原理優先のアメリカ企業としては当然の動きだが、昔から論議されていたプロダクション・シェアリング論も、モジュール化してコモデティになった部品を掻き集めて組み立てるだけに特化してしまったアメリカ企業には、ある程度の品質が保証されれば品質価格以外の選択肢はなくなってしまったのである。
フィッシュマンは、この本で、ドイツ企業への中国の影響について、アメリカとは違った視点から語っていて面白い。
ドイツ企業は、母国の高い人件費や社会福祉コストを回避できて中国では成功していると言う。
ドイツは、アメリカ企業とは違って日本企業に近く、自社で製造部門を維持しようとする傾向がある。
しかし、中国企業との価格競争に勝つ為に海外への生産拠点の移動圧力は強いのだが、中国ではなく主に賃金の安い東欧諸国へ進出している。
外国への進出圧力が、労働組合の交渉力を弱体化させて、休暇短縮・労働時間延長、割増なしの超過勤務、就業規則の変更等、労使関係を大きく変えている。
世界の人々は、中国人の団体が店に現れて、大きな買い物袋を提げて帰って行くと心配になると言う。
ドイツの伝統工芸のマイスター、イタリアのガラス吹き職人、ベルギーのレース織り職人、ロシアの入れ子人形マトリョーシカ職人、ジャワの更紗のロウケツ染め職人等を出し抜いて、何でも世界各国の特産手工芸品の精巧な模造品を瞬時に製造して、インターネットで売りさばくと言うのである。
紙や羅針盤や火薬など偉大な発明をした中国である。眠れる獅子が起きて走り出すと途轍もない力を発揮する。追いつかれるのは時間の問題かも知れない。
原書で380ページほど、日本語訳で500ページ弱のかなりボリュームのある本だが、実際の現実世界の記述が多いので、冗長過ぎるきらいはあるが、兎に角、面白い。
今月の初旬のこのブログで、アメリカ企業の競争力強化戦略を追求したMITグローバル化研究チームの「グローバル企業の成功戦略」について書いたが、この本を読んでみると、別な違ったアメリカが見えてくる。
GMやデル等アメリカのトップ企業は、IT革命を活用して、工業製品をモジュール化して、最適生産を求めてグローバル市場にアウトソーシングして、膨大な利益を上げている。
しかし、これは一部の成功企業の場合であって、このアウトソーシングとオフショアリング戦略によって、アメリカ全土の製造業は、中国旋風に煽られて未曾有の苦境に陥って倒産に倒産を重ねて、この3年間、製造業での失業は経済全体の失業率の50倍に達し、更に長期化して疲弊した地域は回復の見込みさえないのだと言う。
CNN等の人気キャスター・ルー・ダブスは、連日、アメリカ人の雇用を外国に移す企業を裏切り者として攻撃しているが、このマニフェスト「アメリカ輸出」が、アイゼンハワーの産軍複合体批判以降最大の大資本・大企業への非難だと言うのである。
今回の中間選挙のブッシュ敗北は、イラク問題だけではなく、国民の経済不安が大きな比重を占めていたのであろう。
今回の民主党勝利によって、そして、アメリカ経済が不況局面に向かえば、元の切り上げを含めて中国への圧力が増し、保護貿易主義の台頭などアメリカの対外経済政策は大きく変らざるを得ないであろう。
アメリカ人労働者達は、自分達の不運の元凶は中国だと認識しており、その3分の1が、工場が中国に移転して職を失うかも知れないと不安を感じていると言うのである。
アメリカでは、『中国価格』、即ち、可能な範囲での最低価格と言う概念が闊歩していて、モジュール化を追及してアウトソーシングに特化したアメリカ企業の仕入れ担当者は、最高の品質と最低の価格(その大半が中華圏の製品)を求めて世界中を駆け回っており、価格競争について行けないアメリカ企業の供給先を片っ端から切って行くのだと言う。
アメリカでは、今、倒産したり製造を中止した会社の設備機械の叩き売りオークションをしている「産業オークション会社」がグローバル化を謳歌していて、その顧客の大半は、製造業を止めてアウトソーシングに切り替えたり、製造部門を中国などに移転している優良企業だと言うのである。
利益極大化等の経済原理優先のアメリカ企業としては当然の動きだが、昔から論議されていたプロダクション・シェアリング論も、モジュール化してコモデティになった部品を掻き集めて組み立てるだけに特化してしまったアメリカ企業には、ある程度の品質が保証されれば品質価格以外の選択肢はなくなってしまったのである。
フィッシュマンは、この本で、ドイツ企業への中国の影響について、アメリカとは違った視点から語っていて面白い。
ドイツ企業は、母国の高い人件費や社会福祉コストを回避できて中国では成功していると言う。
ドイツは、アメリカ企業とは違って日本企業に近く、自社で製造部門を維持しようとする傾向がある。
しかし、中国企業との価格競争に勝つ為に海外への生産拠点の移動圧力は強いのだが、中国ではなく主に賃金の安い東欧諸国へ進出している。
外国への進出圧力が、労働組合の交渉力を弱体化させて、休暇短縮・労働時間延長、割増なしの超過勤務、就業規則の変更等、労使関係を大きく変えている。
世界の人々は、中国人の団体が店に現れて、大きな買い物袋を提げて帰って行くと心配になると言う。
ドイツの伝統工芸のマイスター、イタリアのガラス吹き職人、ベルギーのレース織り職人、ロシアの入れ子人形マトリョーシカ職人、ジャワの更紗のロウケツ染め職人等を出し抜いて、何でも世界各国の特産手工芸品の精巧な模造品を瞬時に製造して、インターネットで売りさばくと言うのである。
紙や羅針盤や火薬など偉大な発明をした中国である。眠れる獅子が起きて走り出すと途轍もない力を発揮する。追いつかれるのは時間の問題かも知れない。