何度観ても見応えのあるオペラは、このビゼーの「カルメン」。
何回か、オペラハウスで鑑賞しているのだが、強烈に印象に残っているのが、コベントガーデンのロイヤル・オペラ・ハウスでの公演で、アグネス・バルツァのカルメンと大病前のホセ・カレーラスのドン・ホセの素晴らしい舞台である。
メス豹のような精悍な出で立ちで、突如颯爽と舞台上階に登場して、ハバネラを歌ったバルツァに圧倒されたのだが、終幕のホセがカルメンを刺して崩れ折れるシーンなどは、やはり、カレーラスが一番ホセに適役だと思えるオペラであった。
もう一つ、3D映画だったのだが、2010年公演のロイヤル・オペラ・ハウスの「カルメン」で、クリスティーン・ライスのカルメン、ブライアン・ハイメルのドン・ホセで、これも、映画ながら3Dなので、迫力満点の素晴らしい舞台であった。
ところで、このオペラは、スペインを舞台にしているのだが、フランスの作家プロスペル・メリメの作品を基にして、フランスの作曲家ジョルジュ・ビゼーの作品で、純然たるフランス語のオペラである。
従って、今回の出演者で、指揮者ルイ・ラングレ、カルメンのクレモンティーヌ・マルゲーヌ、ドン・ホセのロベルト・アラーニャなど主要メンバーが、フランス人であり、格好の舞台であった。
このMET公演のキャストは、
指揮:ルイ・ラングレ 演出:リチャード・エア
カルメン:クレモンティーヌ・マルゲーヌ、ドン・ホセ:ロベルト・アラーニャ、ミカエラ:アレクサンドラ・クルジャック、闘牛士エスカミーリョ:アレクサンダー・ヴィノグラドフ
自由奔放な魔性のジプシー女カルメンの虜になった、真面目な兵士ドン・ホセの人生の歯車が狂い出し破局に向かう、そんなオペラだが、
メリメの小説を読んだが、面白かった。
作者の考古学者が、スペインで出会った山賊の身の上話を語ると言う形式で、山賊がカルメンという情熱的なジプシー女に振り回されたあげく、悪事に身を染めてお尋ね者となり、ついには死刑となる。と言う話である。
オペラは、竜騎兵伍長のドン・ホセが、カルメンに誘惑されて恋に落ち、婚約者ミカエラを捨てて軍隊を脱走して盗賊の仲間入りをする。しかし、すぐに、カルメンはホセに愛想をつかして闘牛士エスカミーリョに心を移し、嫉妬に狂ったドン・ホセは、歓声に沸く闘牛場の陰で、復縁を哀願するも拒絶されてカルメンを刺し殺す。
冒頭、カルメンが歌う「ハバネラ」 恋は野の鳥 誰も手なずけられない・・・から、
エスカミーリヨが歌う「闘牛士の歌」
ドン・ホセが、カルメンが投げ与えた花を牢獄でも大切に慈しみ、カルメンに逢うことのみを思って耐えたと切々と歌う「花の歌」
とにかく、美しくて感動的な長いアリアが、魅了してやまない。
それに、ホセを愛して身を案じながら登場する許嫁ミカエラとの二重唱が、また、美しくて感動的で、実際の夫婦でもある所為もあって心に響く。
インタビューで、ミカエラのクルジャックが、(オペラでは、カルメンにホセを取られるのだが)、家に連れて帰るので私の勝ちと言っていた。
このクルジャック、実に素晴らしいソプラノで、来期、METで、蝶々夫人を歌うのだと言っていた。
カルメン節と言うか、カルメンは、舞台でも映像でも随分観たり聴いたりしており、音楽音痴の私でもかなり脳裏にしみ込んでいるのだが、ルイ・ラングレの指揮は、最初から最後まで、感動の極み。
カルメン歌手は、メゾ・ソプラノ、
結構、何人かの素晴らしい舞台を見聞きしているが、若くてパンチが効いて、エキゾチックな美人マルゲーヌの魅力は抜群で、踊りも芝居も非常に上手くて、女性の多様性を総て秘めた女だと言うカルメンを感動的に演じて感激。
アラーニャのドン・ホセは折り紙付きなので、コメントは蛇足。
闘牛士エスカミーリョのヴィノグラドフは、容姿端麗、それに、バリトンの素晴らしさは抜群で、闘牛士が様になっている。
ヴィノグラドフが、禁止前の闘牛を観たと言っていたが、闘牛がスペインで禁止されたとは知らなかったのでびっくりした。
私は、もう、随分前だが、マドリッドとメキシコで、一突きで猛牛がダウンする凄い闘牛を観ていて、その迫力を良く覚えている。
やはり残酷であり、隣にいた若いアメリカ人夫妻が耐えられないと呟いていたが、「それじゃ、ヴェトナムの悲惨な戦争はどうなのか」と聞いたら、「悪夢だ。言わないでくれ」と顔を伏せていた。
それに、このオペラは、ジプシームード満開であるから、フラメンコやスペイン舞踊の素晴らしいシーンがふんだんに取り込まれていて、前奏曲や間奏曲でも、舞台でダンスが踊られていて美しい。
カルメンの狂気や激しくも美しいスペイン気質爆発の踊りと音楽など、これは、マドリッドやバルセロナのナイトクラブで夜明け近くまで演じられる咽返るようなフラメンコの熱狂を観れば納得いくのだが、グラナダの洞窟で見たジプシーの素朴な舞踊の激しさに原点があるのであろうか。
カルメンや仲間たちの踊りも半端ではなく本格的で素晴らしい。
イギリスの演出家リチャード・エアの演出は、クラシックながら、本舞台の回り舞台と新設の二重の回り舞台をうまく活用して、実に機動的で、舞台とシーンが激変する舞台を器用に展開、流石である。
この頃は、殆ど、オペラ鑑賞にオペラ劇場に通えなくなってしまったが、このMETライブビューイングの素晴らしさに、慣れてしまって楽しませてもらって居る。
尤も、本物のMET公演鑑賞には、臨場感や本舞台独特の感動はあるのだが、これまでに、ロイヤルオペラを筆頭にして、METやスカラ座、ウィーン等々、実際にオペラ劇場へ、何十回も通い続けてきたので、それはそれ、
とにかく、実際の相撲を国技館で見るのとテレビで見るのとの差に近いが、映画劇場の映像と音響は、本物のオペラ劇場公演とは違った別な感動も与えてくれるし、このMETライブビューイングは、素晴らしい企画だと思う。
何回か、オペラハウスで鑑賞しているのだが、強烈に印象に残っているのが、コベントガーデンのロイヤル・オペラ・ハウスでの公演で、アグネス・バルツァのカルメンと大病前のホセ・カレーラスのドン・ホセの素晴らしい舞台である。
メス豹のような精悍な出で立ちで、突如颯爽と舞台上階に登場して、ハバネラを歌ったバルツァに圧倒されたのだが、終幕のホセがカルメンを刺して崩れ折れるシーンなどは、やはり、カレーラスが一番ホセに適役だと思えるオペラであった。
もう一つ、3D映画だったのだが、2010年公演のロイヤル・オペラ・ハウスの「カルメン」で、クリスティーン・ライスのカルメン、ブライアン・ハイメルのドン・ホセで、これも、映画ながら3Dなので、迫力満点の素晴らしい舞台であった。
ところで、このオペラは、スペインを舞台にしているのだが、フランスの作家プロスペル・メリメの作品を基にして、フランスの作曲家ジョルジュ・ビゼーの作品で、純然たるフランス語のオペラである。
従って、今回の出演者で、指揮者ルイ・ラングレ、カルメンのクレモンティーヌ・マルゲーヌ、ドン・ホセのロベルト・アラーニャなど主要メンバーが、フランス人であり、格好の舞台であった。
このMET公演のキャストは、
指揮:ルイ・ラングレ 演出:リチャード・エア
カルメン:クレモンティーヌ・マルゲーヌ、ドン・ホセ:ロベルト・アラーニャ、ミカエラ:アレクサンドラ・クルジャック、闘牛士エスカミーリョ:アレクサンダー・ヴィノグラドフ
自由奔放な魔性のジプシー女カルメンの虜になった、真面目な兵士ドン・ホセの人生の歯車が狂い出し破局に向かう、そんなオペラだが、
メリメの小説を読んだが、面白かった。
作者の考古学者が、スペインで出会った山賊の身の上話を語ると言う形式で、山賊がカルメンという情熱的なジプシー女に振り回されたあげく、悪事に身を染めてお尋ね者となり、ついには死刑となる。と言う話である。
オペラは、竜騎兵伍長のドン・ホセが、カルメンに誘惑されて恋に落ち、婚約者ミカエラを捨てて軍隊を脱走して盗賊の仲間入りをする。しかし、すぐに、カルメンはホセに愛想をつかして闘牛士エスカミーリョに心を移し、嫉妬に狂ったドン・ホセは、歓声に沸く闘牛場の陰で、復縁を哀願するも拒絶されてカルメンを刺し殺す。
冒頭、カルメンが歌う「ハバネラ」 恋は野の鳥 誰も手なずけられない・・・から、
エスカミーリヨが歌う「闘牛士の歌」
ドン・ホセが、カルメンが投げ与えた花を牢獄でも大切に慈しみ、カルメンに逢うことのみを思って耐えたと切々と歌う「花の歌」
とにかく、美しくて感動的な長いアリアが、魅了してやまない。
それに、ホセを愛して身を案じながら登場する許嫁ミカエラとの二重唱が、また、美しくて感動的で、実際の夫婦でもある所為もあって心に響く。
インタビューで、ミカエラのクルジャックが、(オペラでは、カルメンにホセを取られるのだが)、家に連れて帰るので私の勝ちと言っていた。
このクルジャック、実に素晴らしいソプラノで、来期、METで、蝶々夫人を歌うのだと言っていた。
カルメン節と言うか、カルメンは、舞台でも映像でも随分観たり聴いたりしており、音楽音痴の私でもかなり脳裏にしみ込んでいるのだが、ルイ・ラングレの指揮は、最初から最後まで、感動の極み。
カルメン歌手は、メゾ・ソプラノ、
結構、何人かの素晴らしい舞台を見聞きしているが、若くてパンチが効いて、エキゾチックな美人マルゲーヌの魅力は抜群で、踊りも芝居も非常に上手くて、女性の多様性を総て秘めた女だと言うカルメンを感動的に演じて感激。
アラーニャのドン・ホセは折り紙付きなので、コメントは蛇足。
闘牛士エスカミーリョのヴィノグラドフは、容姿端麗、それに、バリトンの素晴らしさは抜群で、闘牛士が様になっている。
ヴィノグラドフが、禁止前の闘牛を観たと言っていたが、闘牛がスペインで禁止されたとは知らなかったのでびっくりした。
私は、もう、随分前だが、マドリッドとメキシコで、一突きで猛牛がダウンする凄い闘牛を観ていて、その迫力を良く覚えている。
やはり残酷であり、隣にいた若いアメリカ人夫妻が耐えられないと呟いていたが、「それじゃ、ヴェトナムの悲惨な戦争はどうなのか」と聞いたら、「悪夢だ。言わないでくれ」と顔を伏せていた。
それに、このオペラは、ジプシームード満開であるから、フラメンコやスペイン舞踊の素晴らしいシーンがふんだんに取り込まれていて、前奏曲や間奏曲でも、舞台でダンスが踊られていて美しい。
カルメンの狂気や激しくも美しいスペイン気質爆発の踊りと音楽など、これは、マドリッドやバルセロナのナイトクラブで夜明け近くまで演じられる咽返るようなフラメンコの熱狂を観れば納得いくのだが、グラナダの洞窟で見たジプシーの素朴な舞踊の激しさに原点があるのであろうか。
カルメンや仲間たちの踊りも半端ではなく本格的で素晴らしい。
イギリスの演出家リチャード・エアの演出は、クラシックながら、本舞台の回り舞台と新設の二重の回り舞台をうまく活用して、実に機動的で、舞台とシーンが激変する舞台を器用に展開、流石である。
この頃は、殆ど、オペラ鑑賞にオペラ劇場に通えなくなってしまったが、このMETライブビューイングの素晴らしさに、慣れてしまって楽しませてもらって居る。
尤も、本物のMET公演鑑賞には、臨場感や本舞台独特の感動はあるのだが、これまでに、ロイヤルオペラを筆頭にして、METやスカラ座、ウィーン等々、実際にオペラ劇場へ、何十回も通い続けてきたので、それはそれ、
とにかく、実際の相撲を国技館で見るのとテレビで見るのとの差に近いが、映画劇場の映像と音響は、本物のオペラ劇場公演とは違った別な感動も与えてくれるし、このMETライブビューイングは、素晴らしい企画だと思う。