
撫順の製鉄所でひたすらSL撮影に励んでいたところ、いつの間にか2時間半以上の時間が過ぎ去り、踏切近くのボロい食堂で麺をすすり終える頃には午後2時近くになってしまいました。そこで、あと1時間もすれば通勤電車の夕方の運行が始まる……ということで、再びバスに乗って振り出しの礦務局駅に戻り、ノソノソと姿を現した電車に乗って、西露天鉱の北西に位置する「新生橋」駅に向かいました。真横に巨大な火力発電所、石油化学工場、そして広大な貨物ヤードをかすめつつ、10数分ほど客車改造の通勤電車にガタゴト揺られる最高に濃いぃひとときです……! それはまるで、鶴見線のようなノリ (笑)。
そして「新生橋」駅では、真横を激走する国鉄の貨物列車を眺めながら、しばしこの通勤電車の撮影を堪能しました (^^)。
この車両は、かつて一部大都市における通勤輸送のために設定されていた「市郊」列車用として製造されたYZ31型客車 (一番メジャーなボロ客車・YZ22型のロングシートバージョン) でして、礦務局鉄道がCNRから譲り受けたのち手弁当で電車に改造したというシロモノ。しかも、出来るだけ改造コストを下げるためか、それとも動力集中の思想が根強いためか、1M2Tや1M3Tという、まるで三岐北勢線のような編成構成となっており、パンタグラフの真下に設けられた機械室に主要な機器が集約されています。そしてもちろん駆動方式は釣掛!
というわけで、ただでさえ簡素でボロい車両が、如何にも重苦しそうに「グゥゥゥ~」とうなり声を上げ、どんなに頑張っても40km/h程度しか出ない (?) というノロノロぶりでガタガタ揺れながら走る……という、何ともワビサビ的な情景を楽しむことが出来るのです! (^o^)

しかし、そんな撫順の通勤電車も、楽観できない状況に置かれているようです……。そのことは、ラッシュアワーでも下手をすると数十分も運転間隔が開いてしまうというダイヤに現れていました。 撫順の通勤電車は、この「新生橋」駅から西露天鉱の北側~中心街南端の「礦務局」駅を経由して「東崗」駅に至る区間がメインルートで、「新生橋」からは「機修」「古城子」行きの二手に分かれ、「東崗」からは「劉山」「元龍山」行きの二手に分かれるのですが (この他にもマイナーな路線があるものの、説明がややこしくなるので省略 ^^;)、撫順の出炭量が多く道路の整備状況が悪かった頃 (遅くとも90年代中頃?) までは、通勤電車もかなりの頻繁運転だったようです。しかし今では道路整備が進んで路線バスが頻繁に走り、しかも電車の駅はだいたい市街地や各居住区の中心から外れたところにあることから、電車の利用客は激減の一途……。私もとある駅の近くで「電車の駅は何処か?」と道路清掃員のオバチャンに聞いたところ「アンタ何でそんな面倒なことするの? すぐ目の前にバスがいっぱい走っているじゃない♪」と言われてしまいました。かくして、地元のフツーの人々に見捨てられてしまった電車は、減便→乗客減→さらなる減便というマイナスのスパイラルに陥っているのでした……(-_-;; だからこそ、電車の撮影は本数が多い「新生橋」~「東崗」間でないと効率が悪いです。ちなみに2枚目の画像は東崗駅にて)。
それでも、礦務局としては何としても乗客をつなぎ止めようと必死のようで、私の訪問時には急ピッチで駅の美化工事が進められていたのに加え、私の訪問直後には朱色と白の新塗装電車 (こっちの方が、広告入りの青塗装よりも全然見栄えが良い……) も出現しました。路線の全体的な雰囲気としては、思わず鶴見線と姉妹提携させたくなるほど「工業地帯の地味な電車」っぽさが炸裂しており素晴らしいですので、是非改めてこの新塗装を撮りに訪れ、弱々しい釣掛の走り (笑) を楽しんでみたいと思っています……。