地味鉄庵

鉄道趣味の果てしなく深い森の中にひっそりと (?) 佇む庵のようなブログです。

東急8001F・古豪と憩う最後の春

2008-04-03 22:29:30 | 大手民鉄 (東急)


 東急で営業運転を続ける最後の8000系であった8001Fは、周知の通り大井町線の新型ATC導入のため、2月下旬を以て運用から離脱しましたが、先日ついに恩田=長津田工場に回送されました。この先、保存か解体か譲渡か……先のことは全く分かりませんが、もうこれで「8000系さよなら企画第3弾」はあり得ず、廃車は間違いないでしょう……。また、ドア事故を起こした8005Fも、先日東急公式HPにて電気系統のショートが事故原因であったことを最終報告したのを機に、正式に廃車が決まったようで……やはり恩田に回送されました。
 そうとなれば、早ければ数日から1~2週間ほどで搬出され、川崎港か解体業者に持って行かれる可能性もあり、8001・8005Fが恩田に佇む最後の姿を眺めて惜別するとなれば待ったなしです。ネット上で見かけたところでは、どうやら今週に入ってから回送されたようですので、ひょっとすると未だバラされていない本来の編成の姿を目にすることが出来るかも知れない……。そこで、4月に入っていろいろと忙しいにもかかわらず、出勤ついでに恩田に寄り道してみました。



 私が訪れたとき、工場内の作業はとくに行われておらず、3両の庫内車はいずれもパンタを畳んだ状態。そんな中、奇しくも8001Fとデワ3043 (かつてのデハ3498) が並んで、春の陽光の中でまどろんでいました (なお、8005Fは正門に近い位置に留置され、編成写真をうまく撮ることはかないませんでしたが、日の光を浴びてギラリと輝く姿は、やはり8000系の風格そのものでした……)。その光景は……余りにも長閑すぎてほのぼのとした風情すら感じられます。しかしそれは同時に、東急が生み出した名車の中の名車どうしが顔を合わせる最後のひとときでもあり……自分が再び電車に乗って長津田に戻った後、いつ8001Fがバラバラになってしまうのか見当もつきません。そう思うにつけ「春なのに、お別れですか」というフレーズが余計にこみ上げて来ます。工場の周囲に植えられた散り始めの桜から、風が吹くたびに花びらが舞い上がるさまも、東急8000系の時代が静かに終わり行くのをそっと見送っているかのようです……。デワ3043も、自分よりも遥かに若い8001Fすら離脱して行く光景に、胸中何を想うのでしょうか?

 ともあれ改めて、8001Fの離脱にあたってイベントが行われなかったのは良かったのかも知れない……と思います。沿線の桜並木が美しい東急線に生まれ、一時は桜の花の東横特急HMも誇らしげに走った8000系には、こんなにも静かで粋な最後こそふさわしかったのでしょう。そして、たまたま今日訪れて、たった独りそっと別れを告げることが出来た……そんな巡りあわせに感謝したいと思っています。
 去りゆく8001Fに、そして東急における8000系の時代の輝きに、献杯!