インドネシアの国産電車のうち非冷房VVVF車は、機器のヘタレ具合に青息吐息ながらも辛うじて激しい混雑をさばいていますが、それとは全く別に極めて余裕のある使われ方をしている冷房車があります。それがこのKRL-1!
現在KRL-1は4連2本が存在し、登場したのは今から9年前。それはちょうど都営6000系がジャカルタで走り始めて間もない頃で、国産冷房車を追加導入することによって冷房つき急行電車サービスを一層拡充するだけでなく、将来的にはインドネシア製の電車を他の途上国に売り込むための見本とする意図もあったのかも知れません。しかし、折角気合い十分で新造したにもかかわらず、輸入した電装品をさらに組み立てる際に不具合があったためか、何故か故障が頻発したようで……一時は製造元のINKA社 (意味はズバリ「鉄道車両製造会社」) に送り返したのだとか。
そんなKRL-1、現在では平日のみ1運用が設定されている環状線エコノミーAC電車 (チリウン号→川の名前) として運行され、紫+黄緑の編成とブルー濃淡の編成が輪番で走っています。どちらかの編成が運用に入ればもう一方の編成は終日寝ているのみということで、昨年の訪問時は紫+黄緑編成に乗って撮ったのみでしたが、今年の訪問時にはブルー濃淡編成を記録することができました。
まず1枚目は、ジャティヌガラからマンガライに至る直前の急カーブを行く光景。逆光ですがなかなか良い感じ♪ そして2枚目は、線路市場があるドゥリでの撮影ですが……マンガライからドゥリまでは実際にKRL-1に乗車しました。環状線内の撮影地をめぐり歩くにあたって、KRL-1のエコノミーAC「チリウン」は乗ることが出来さえすればなかなか便利な列車ですが、如何せん1編成のみが環状線を時計回りにグルグル回っているだけですので (厳密には東線とマンガライからの線路が合流するジャティヌガラでスイッチバックしますので、完全な環状ではありません)、運行間隔は極めて散漫……。朝と夕方に各4回、大体1時間半間隔で環状線を一周するという使えなさであります。したがって、大都市の真っ直中における移動需要に応える運行体制にはなっておらず、むしろ4連の冷房車であるために現状では使い勝手が悪いKRL-1を辛うじて機能維持するために走っているような雰囲気すら漂います。一般客のためにフリークエンシーを確保しようという発想は一切見られず……。というわけで、午前9時台にマンガライを発車するKRL-1に乗ったところ、一般客は相変わらず僅少 (汗)。「偶然自分の予定とこの電車の時刻が合うため、渋滞を避けるためにも利用したい」という申し訳程度の客を乗せているというのが実情です。
この電車、空調・ドア及びドアステップ・下回りのいずれを取っても、きちんと動く限りはそれなりにまともだ……という印象がありますので、現状の継子扱い (?) を不憫に思っていたのですが、現地の掲示板をいろいろ見ていたところ、9年ぶりに発展バージョンの車両が登場するとか。形状は基本的にKRL-1と同じで、正面のみやや丸みを増しているようです。驚いたのは……新造車も相変わらず4連らしいということ。6両または8両として急行に投入すれば良いのでは?と思っていたのですが、4連を増やすということは……環状線「チリウン」の本数を増やすためなのか、それともジャカルタ・コタ~タンジュンプリオク線が近いうちに復活するのか……妄想している間が楽しいですね (笑)。