地味鉄庵

鉄道趣味の果てしなく深い森の中にひっそりと (?) 佇む庵のようなブログです。

第五ジャカルタ炎鉄録 (17) さよならメトロ7121

2013-12-11 00:00:00 | インドネシアの鉄道


 現在、埼京線の205系を猛烈な勢いで輸入し、一刻も早い営業運転開始に向けて整備・試運転に邁進するジャカルタの鉄道シーン……。その勢いはまさに経済発展を続けるインドネシアの姿そのものですが、同時にしばしば鉄道というインフラは、速すぎる経済発展にいろいろな要素が追いついていないことを露見させる役回りにならざるを得ないようなところがあります。たとえば、頻繁運転になればなるほど、保安機器がそれに対応しているのか、無理な踏切横断や投石など鉄道を取り巻く人々の公共道徳がどうなのか、といった点をはじめ、挙げ始めればきりがないという……(まぁ線路内立入の日常化もその典型なわけで、線路内で撮り放題のヲタとしては余りエラソーなことは申し上げられませんが)。
 一昨日、そんな危惧が現実のものとなってしまいました。既にリンク頂いておりますパクアン急行様・落花生。様・Kucing様のブログや『じゃかるた新聞』Web版等で詳しく報じられております通り、スルポン=バンテン線のクバヨラン~ポンドック・ランジ間にて、メトロ7121Fのスルポン発タナ・アバン行が国営石油会社プルタミナのタンクローリーと衝突、脱線大破炎上するという大惨事に……。(とくにパクアン急行様のブログでは詳細な現地速報レポートあり)



 この結果、メトロ7121は正面が原型をとどめないほど大破・焼失したほか、各種ニュース映像では2両目の床下まで一時引火していたようです。また、運転士氏ほか数名が亡くなられたとのこと。御冥福をお祈り致します……。
 不幸中辛うじて幸いであったのは、日中のスルポン始発の電車ということで乗車率が低かったこと、そしてパクアン急行様も指摘しておられる通り難燃車体で客室部分の破損がほとんどなかったことでしょうか (まさに正面をクラッシャブルゾーンとして犠牲にし、客室を守った格好です)。もしこれがラッシュアワーであったら混乱は相当大きかったはずですし、とりわけ先頭車は女性専用車であることから、イスラーム的価値観に基づいて女性を守るべく日本の事例を参考に導入した女性専用車が逆に大量の女性の犠牲を発生させたということで、女性専用車の位置変更をめぐる議論が沸騰する可能性もゼロではないのかも知れません。
 というわけで、今年8月のジャカルタ撮り鉄記録、予定を変更しまして……7121の最後の活躍シーンをアップしてみたく存じます。この車両は全面ラッピングとなってしまったため、決して写欲が湧く車両ではなく (汗)、実際今回の訪問時にはこの車両との縁は薄く、まともに撮影した機会は少なかったのですが、とにかくジャカルタの鉄道シーンにおける事故の多さを考えるにつけ、来た車両は必ず撮るという方針をとっていましたので、今改めて「このような方針をとっておいて正解だった……」と思っているところです。
 なお、車両不足に常に悩むジャカルタの鉄道において、無傷な車両をこのまま放置するはずはないと思われますので、恐らくデポックで雨ざらしになっている中間車を活用した改造先頭車を用意して、新7121Fが出来るものと思われます。事故そのものは非常に残念ですが(とくに、東急車がもしそうなったらこの上ない悲しみが……)、どのような未知の展開が待ち受けているのか、引き続き注目したいと思っております。