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ミステリ感想-『闇の底』薬丸岳

2006年09月12日 | ミステリ感想
~あらすじ~
少女殺害事件のたびに、かつて少女への性犯罪を犯した者が惨殺される連続殺人事件が起きる。
愚劣な犯罪を葬るため、愚劣な犯行に手を染め「死刑執行人サンソン」を名乗る犯人の正体は。そして彼の狙う「完全犯罪」とは。


~感想~
『アインシュタイン・ゲーム』は例外として、今年最大の駄作である。
まず、設定はどう見ても『デスノート』。犯罪抑止効果を狙った、犯罪者の粛清。そのまんまである。
それでは『デスノ』の醍醐味であった犯人と警察、追う者と追われる者との駆け引きはというと、これが皆無。警察は完全に受け身に回り、犯人は自分のシナリオ通りに全てを運んでいく。
では犯人の意外性はというと、おそらく大半の読者は中盤までに候補を2人に絞れることだろう。そうなると予想を上回る結末を期待するところだが、終わってみれば完全に予想の範疇。
それなら結末でカバーと思いきや、着地点はそれでいいのかという地点に決まった。あの結末は非常に納得がいかない。それなら、最終章は描かなかった方が良かったとすら思える。『デスノ』を気にしすぎたあまり、ぎごちない着地を決めざるを得なかったようにも思えてならない。
また、犯人の思考もいまひとつつかめない。崇高(?)な目的があるわりに、最終節での言動はそれまでの視点から逸脱して見える。いかにもページ数が足りなくなって駆け足気味なのも痛い。
蛇足だが、長瀬→村上→犯人の順で視点が移り物語は進んでいき、終盤で順番が崩れ「なにか仕掛けがあるのか」と思いきや、ただ崩れただけだったりと、いろいろな面で未成熟。
正直、新進気鋭の作家の第二作として出すには早計だったのではと思えてしまう。
『デスノ』もどきとはいえ、中盤までは面白かっただけに期待を裏切られた感は強い。


06.9.12
評価:☆ 1
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