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文学感想-『悼む人』天童荒太

2009年05月24日 | ミステリ感想
~あらすじ~
聖者なのか、偽善者か?
「悼む人」は誰ですか。
善と悪、生と死が交錯する至高の愛の物語。
第140回直木賞受賞作品。


~感想~
桜庭一樹「私の男」で痛い目にあったのに、懲りずに直木賞をまた。
いつの間にか直木賞は赤裸々に性を描かなければ獲れなくなってしまったらしいが、小説としての完成度は「私の男」なんぞ問題にならない、というか比べるのが失礼な出来栄えである。
とにかく「悼む人」静人の造型が抜群で、それだけで物語を支えうる力がある。それこそ彼を真似て「悼む人」になってしまう者が現れてしまいかねないほどに印象的で、本書を楽しめたか否かに関わらず、「悼む人」の存在はずっと脳裏に刻み込まれることだろう。
つまり言ってしまえば単なるキャラ小説で、「悼む人」のキャラひとつに勝負をかけただけの作品である。
だがこの強烈な存在感を放つ「悼む人」は、直木賞を獲るにそぐわしい、静かな輝きを放っている。
映画化したら「おくりびと」に勝てるんじゃね?


09.4.13
評価:★★★ 6
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