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ミステリ感想-『龍神の雨』道尾秀介

2009年05月30日 | ミステリ感想
~あらすじ~
人は、やむにやまれぬ犯罪に対し、どこまで償いを負わねばならないのだろう。そして今、未曾有の台風が二組の家族を襲う。
※コピペ


~感想~
これまで驚異的な高打率を残してきた作者だが、今までの作品を100とすると今回は70といったところか。

↓以下ネタバレ↓

タイトルに掲げた2つのモチーフのうち、龍が明らかに蛇足だったのでは。重要な場面に(錯覚や妄想の類とはいえ)そのものズバリ龍が現れ、啓示を与えていくのはちょっと浮きすぎの感。物語があまりにも現実的な、生々しいものだけに、超現実的なモチーフはそぐわなかったかように思えてならない。
また、今回も「表の事件を語ることで裏の事件を隠す」手法は健在だが、あまりにも登場人物が少なすぎて、6(重要キャラ)-4(主要キャラ)-1(明らかに犯人ではないキャラ)=1で真犯人が解ってしまうのは厳しいところ。
その真犯人も類型的を通り越して戯画的な、いまどきB級ホラー映画にも出てこないようなサイコっぷりで、これまた浮いてしまっている。
しかしラスト、溝田兄弟の行く末に希望の光を照らす一方で、添木田兄妹の行く末にどうしようもないような暗雲を立ち込めさせた(自首の電話はつながらず、埋めた死体は露出)対比は見事だし、物語の分岐点に用いた「雨」というモチーフ、キーワードは大成功なのだが……。

決して悪い作品ではなく、期待には十全に答えているものの、それ以上を期待した線を飛び越えはしなかったのは残念だった。


09.5.28
評価:★★★ 6
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