~あらすじ~
通訳捜査官の七崎隆一は、かつて同じ通訳捜査官で義父の不正を告発し死に追いやった。
以来、家庭は荒れ裏切り者として署内での立場も失っていた七崎は、息子の部屋から血まみれのジャンパーを発見。
それは中国人殺害現場から逃走した容疑者が着ていたものと酷似していた。
~感想~
江戸川乱歩賞を射止め各種ランキングでも上位に入った「闇に香る嘘」に続く、受賞後第一作。
デビュー作と同じく描写は丁寧で伏線も豊富、丹念な取材の跡もうかがえる。何より通訳捜査官という存在すら知らなかった役職が実に興味深い。
だがなんとも褒めづらい作品で、まず事件の構図も主人公の置かれた環境も非常に複雑ながら、終わってみればありえないくらい何もかも上手いことまとまってしまうのが納得いかない。収まるべき所に収束したというよりも作者の手の内で転がされた感が強く、全てが人工物に見えてしかたがない。
主義主張がブレッブレの暴走主人公を筆頭に、テンプレ的に嫌な上司、勝ち気な女捜査官とキャラに魅力も乏しい。特に女捜査官は完全に女が嫌う女、それも女が「女が書けてない」と叩く方の女で、そこまで女描写が悪くなかったのに横山秀夫があれだけ無軌道に叩かれたなら、本作もメジャーになったら袋叩きになるだろうことは想像に難くない。
また伏線に関しては通訳捜査官という題材を活かした面白いものながら(以下ネタバレ→)P122で田丸が行方不明の工員の名前だけ聞いて「失踪した彼女」と性別を特定しているのが、田丸が中国語を理解している証拠として使われるのかと思いきや全く触れられなくて驚いた。これは見落としではなかろうか。
15.2.6
評価:★★☆ 5
通訳捜査官の七崎隆一は、かつて同じ通訳捜査官で義父の不正を告発し死に追いやった。
以来、家庭は荒れ裏切り者として署内での立場も失っていた七崎は、息子の部屋から血まみれのジャンパーを発見。
それは中国人殺害現場から逃走した容疑者が着ていたものと酷似していた。
~感想~
江戸川乱歩賞を射止め各種ランキングでも上位に入った「闇に香る嘘」に続く、受賞後第一作。
デビュー作と同じく描写は丁寧で伏線も豊富、丹念な取材の跡もうかがえる。何より通訳捜査官という存在すら知らなかった役職が実に興味深い。
だがなんとも褒めづらい作品で、まず事件の構図も主人公の置かれた環境も非常に複雑ながら、終わってみればありえないくらい何もかも上手いことまとまってしまうのが納得いかない。収まるべき所に収束したというよりも作者の手の内で転がされた感が強く、全てが人工物に見えてしかたがない。
主義主張がブレッブレの暴走主人公を筆頭に、テンプレ的に嫌な上司、勝ち気な女捜査官とキャラに魅力も乏しい。特に女捜査官は完全に女が嫌う女、それも女が「女が書けてない」と叩く方の女で、そこまで女描写が悪くなかったのに横山秀夫があれだけ無軌道に叩かれたなら、本作もメジャーになったら袋叩きになるだろうことは想像に難くない。
また伏線に関しては通訳捜査官という題材を活かした面白いものながら(以下ネタバレ→)P122で田丸が行方不明の工員の名前だけ聞いて「失踪した彼女」と性別を特定しているのが、田丸が中国語を理解している証拠として使われるのかと思いきや全く触れられなくて驚いた。これは見落としではなかろうか。
15.2.6
評価:★★☆ 5