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ミステリ感想-『シェルター 終末の殺人』三津田信三

2015年02月21日 | ミステリ感想
~あらすじ~
核爆発と思われる閃光から逃れシェルターに駆け込んだ三津田信三は、シェルターの持ち主である火照陽之助を閉め出してしまった自責の念に苦しむ。
そしてシェルター内では生き残った人々らが次々と密室状況下での不審死を遂げていく。
もし密室殺人ならば、動機のあるはずもない初対面の人々がなぜ殺し合うのか?


~感想~
長らく入手困難だった作品が待望の文庫化。全面改稿し伏線を大幅に増やした他、ホラー映画談義をミステリ映画談義に差し替えたとのこと。刀城言耶シリーズもどきの表紙はともかくとしてあいかわらずのサービス精神だ。
分厚いシェルター内に閉じ込められ、外には核爆発(?)による放射能が立ち込め、とこれ以上ないほど完全無欠の「雪の山荘」状況で、そのうえ起こる事件は片っ端から密室物と、厳重にもほどがある設定にまず驚かされる。
しかし密室トリックはだいたいが、それこそ文庫化にあたって図解が欲しかった機械トリックのオンパレードで、せっかく最強の「雪の山荘」でありながら外部犯の可能性が最後まで捨てられず、と中途半端。
しかも笛を吹いたら現れたような探偵によって明かされる真相は禁じ手というか、トリックだけ取り出してみれば十人のうち十人が怒るだろう相当のがっかりトリックなのだが、膨大な伏線による物量作戦で「お、おう……」と否応なしに納得させてしまう力業には恐れ入った。
それは推理というよりも「論破」とか「説得」に近い気がするし、作中ではおそらく意図的に触れられなかった映画(超ネタバレ→)アイデンティティー のトリックに非常によく似ているものの、あらゆる不満を山のような伏線で、レベルを上げて物理で殴ったようにねじ伏せるその手法が面白かったのは確か。
伏線の配置と回収に定評のある三津田信三でなければ成し得なかった意欲作、あるいは問題作である。


15.2.17
評価:★★★ 6
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