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ミステリ感想-『隠蔽捜査3.5 初陣』今野敏

2015年11月09日 | ミステリ感想
~あらすじと感想~
伊丹俊太郎を主人公にしたスピンオフ作品。
隠蔽捜査シリーズの1~4の前後の出来事が時系列に沿って描かれ、事件が全く起こらない、他作品の裏を描いた短編も見受けられる。
位置づけとしてはファン向けのサービス作品で、シリーズを読破していなければ十全には楽しめないだろう。
逆に言えばファンなら、普段は語り手を務める竜崎伸也を他者の視点から見られるという垂涎の内容で、客観的に描写される竜崎の異端ぶりはやはり面白い。
いくつかの短編では伊丹からの電話だけで難題を立ちどころに解決してしまう、安楽椅子ならぬ電話探偵を披露し、推理を働かせるものもあるが、基本的には竜崎らしい原理原則を口にしているだけなのに、伊丹を悩ませていた難問が消え去ってしまうのもお見事。

あくまでシリーズファン向けではあるが、短編の名手だという作者の手腕が存分に発揮された好作品集である。


15.11.1
評価:★★★ 6
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