小金沢ライブラリー

ミステリ感想以外はサイトへ移行しました

ミステリ感想-『明治断頭台』山田風太郎

2017年07月10日 | ミステリ感想
~あらすじ~
明治2年。役人の不正を糺すため設立された弾正台。その大巡察を務める香月経四郎と川路利良は、フランス人の美女にして巫女エスメラルダの霊媒の力を借り、密室、足跡のない殺人、鉄壁のアリバイ、身元不明の死体……様々な事件の謎に挑む。

東西ベスト(2012)90位、本格ベスト27位


~感想~
先日読んだ「妖異金瓶梅」もオーバーテクノロジーの塊だったが、本作も大概。短編集が最終的に一つの長編となるいわゆる連作短編集形式の草分け的存在とのこと。
1~2話目こそ舞台説明と人物紹介に費やされるが、その後はいかにも本格ミステリらしい謎に、この時代ならではのトリックが凝らされる。そして終章では全編に渡って張り巡らされていた伏線が火を吹き、とんでもないどんでん返しが起こり、時代小説さながらの大立ち回りの末に迎える結末まで、その完成度の高さは尋常ではない。

また当時の有名人やその関係者、まだ無名の頃の有名人が次々と現れるのも見どころで、しかも作者は登場しても決して不自然ではない状況作りに注力し、歴史の狭間にあったかもしれない知られざる逸話として成立させているのも素晴らしい。
時代小説とミステリの融合としても高レベルで成功しており、連作短編集の元祖といった歴史的意義が無くとも高評価でき、意義も踏まえればもう絶賛する他ない秀作である。

それにしてもたった2冊(+バジリスク)を読んだだけでも山田風太郎の恐ろしさと偉大さをひしひしと感じずにはいられない。
山風一人によってミステリのみならず日本のサブカルはどれだけ発展させられたことか。未来人だと言われても信じる。

※角川文庫版・筑摩書房版の木田元の解説はネタバレ要注意


17.7.6
評価:★★★☆ 7
コメント