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ミステリ感想-『ディレクターズ・カット』歌野晶午

2017年12月12日 | ミステリ感想
~あらすじ~
TV局ディレクターの長谷見潤也は、無免許運転の罪をかぶってやった学生らを使い、やらせでスクープ映像を作り名を上げていた。
だがそれも下火になった頃合いに、学生の一人が通り魔に襲われる。長谷見は一発逆転を狙い、通り魔の行方を追う。


~感想~
つくづく器用な作者で、無軌道な若者や、暴走する通り魔の描写は実に達者。相当詳しくないと誰が書いても不自然になるネットの反応も違和感なく、キャラ立ちした面々が動き回る物語もわかりやすくテンポよく進み、結末まで一息に読ませる。
よく考えるとそれなりに複雑な話なのだが、歌野晶午の手に掛かると極めて単純かつぶっちゃけ想像通りの筋立てに展開されるのがお見事。
厳しいことを言えば作者ほどの実力者がわざわざ書くような内容ではない気もするが、それは難癖というものだろう。
器用になんでもそつなく書く才人の作者だが、ノンシリーズ作品は当たり外れが大きい。
本作はどちらかといえば外れの部類だが、それでもあっさり読めてあっさり楽しめる、まさにバラエティ番組のような一冊である。


17.12.9
評価:★★★ 6
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