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非ミステリ感想-『遠縁の女』青山文平

2017年12月23日 | ミステリ感想
~収録作品とあらすじ~
武士と後妻と前妻の母。血の繋がらない三人家族は禄を減らされ、後妻が得意としていた機織りを再開することに……機織る武家

減らされた禄の代わりに新田開発を許可され、調査に赴くが土地は名ばかりの砂地だった。ところが近くの黒松林で美しい女に会い……沼尻新田

父の命で五年の武者修行に出された若い武士。遠縁の女の面影を振り払い、得手ではなかった剣の腕を上げるが、国許に戻ると予期せぬ事態が起こっており……遠縁の女

2017年このミス7位


~感想~
面白いし個人的にはファンになったが全然このミスじゃねえeeeeeeeee!!

多少はかじっている自分でも初見の単語や時代背景が散見されるガチ時代小説で、このミス上位だからと手にした人や、一般的なミステリファンが楽しめるかどうかは甚だ疑問。
このガチ時代小説にこのミス上位なんて冠は本来読まれるべき読者を遠ざける、ただの枷ではなかろうか。去年このミス4位に入った「半席」はまだ未読だが、「半席」が行けたからこれも行けるだろという、乙一の「GOTH」に続く「ZOO」感を覚えずにはいられない。

しかしそうしたミステリファンとしての疑問を除けば、ただただ非常に面白い小説である。
とにかく文章が上手く、比喩は的確にして豊富で心理描写も巧み。難解な時代背景をすんなりと読ませるのみならず、時代小説をかじってきた程度の分際では思いもよらなかった当時の人々の心情や着想に終始驚かされ、感心し続けた。
3編中2編にオチは着かず、話は尻切れトンボに終わるし、このミス上位的なミステリらしさは皆無と言っていいほど見当たらないものの、おそらく江戸時代に興味のある人なら間違いなく楽しめるだろう傑作である。

このミス上位にならなければ自分が読むことはまず無かったわけで、そうした意味ではありがたかったが、やはりこれをこのミスで投票した連中は完全に頭おかしいし、次回は排除されてしかるべきだろう。
あとこの官能小説みたいな表紙もどうかと思うし、どうにも作者が外野のせいで損ばかりしているように思えてならない。


17.12.19
評価:★★★★ 8
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