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ミステリ感想-『建築屍材』門前典之

2018年01月27日 | ミステリ感想
~あらすじ~
建設途中のビル内でホームレスが発見したバラバラ死体。3人が21個のパーツに分解され、しかも大きさを揃えラベリングまでされていた。しかし通報を受けた警察の捜査では死体は見つからず……。

2001年鮎川哲也賞


~感想~
作者が受賞の言葉で「乱暴な言い方ですが、奇想の世界を構築するためなら、他の要素を犠牲にしても構わないとさえ考えています。その考えの善し悪しは別にして、限られた時間をそれだけに固執した作家がひとりぐらいいてもいいのではないか、とも考えています」と述べている通り、他のいろいろなものを犠牲にして召喚された悪魔的発想の映える作品。

建築会社勤務の経験を活かし、ビル建設のいろはからセメントの加工工程まで、専門用語が飛び交う会話は、理解できないことはないが煩雑で、うんざりしてくることは否めない。
後半に起こる足跡のない殺人に至っては、こちらの読解力にも問題があるにしろ、平面図付きで解説されてもほとんど理解できず、トリックも真相もどうでもよくなってしまった。

だがメインとなる人間消失と死体消失の謎は、建設途中のビルならではの、この作者にしか書き得ないトリックで、理解しやすくインパクトのある真相でもあり、大きく評価できる。最後にまたもひょっこり出てくる清涼院流水にもさすがに笑った。
また古式ゆかしく( )内で描かれる心理描写を除けば、不思議なことに数年後に刊行した「浮遊封館」や「屍の命題」よりも文章がおかしくなく、読みやすいのも良いところ。

強烈な真相といい動機といいカイジばりに悪魔的発想……ッ! と讃えたくなる、一読の価値はあるだろう作品である。


18.1.20
評価:★★☆ 5
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