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ミステリ感想-『日本推理作家協会賞 受賞作全集76 短篇集Ⅳ』

2019年04月10日 | ミステリ感想
~収録作品とあらすじ~
小池真理子「妻の女友達」89年短編賞
市役所戸籍係の広中肇は、妻との平凡だが静かな生活を満喫していた。
だが妻の旧友で作家の女が現れ、傍若無人な彼女に振り回された肇は殺害を決意する。

鈴木輝一郎「めんどうみてあげるね」94年短編賞
託老所に入れられた中村きん。そこには老人たちを世話する不思議な少女がおり…。

斎藤純「ル・ジタン」94年短編賞
売れっ子ミュージシャンのレイコのアルバム撮影のためフランスを訪れた一行。盲目のギタリストがネオナチにギターを奪われた騒動に巻き込まれ……。


~感想~
日本推理作家協会賞の短編賞を集めたアンソロジー。読んだことのない作家ばかりだったので購入した。
小池真理子「妻の女友達」は西澤保彦のデビュー作にされたのと同様の「こんな理由で人を殺す奴はいねえよ」というツッコミに目をつぶれば佳作。ただ2時間ドラマ的な話で、意外性は全く無い。

鈴木輝一郎「めんどうみてあげるね」は目をみはる伏線はあるが不穏な空気を活かしきれず、中途半端な印象。魅力的なタイトルを超えられなかった。

斎藤純「ル・ジタン」が収録作中では最も面白く、全然ミステリではないのだが並の作家ならそこそこの長編で書くような濃厚な内容を、中編程度の分量に圧縮した贅沢な作品で、タイミングさえ合えば映画化なりされていただろう。

傑作こそないが読む機会の少ない短編賞は貴重で、知らない作家ばかりなら読む価値のあるアンソロジーである。


19.4.2
評価:★★☆ 5
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