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ミステリ感想-『死者の学園祭』赤川次郎

2022年12月13日 | ミステリ感想
~あらすじ~
結城真知子は多忙な父の都合でたびたび転校するが、転校直前に転落死を目撃し、直後には殺人事件に立て続けに遭う。
はたして死者たちに共通点はあるのか? 真知子は恋に勉強に探偵にと走り回る。


~感想~
国民的作家の初長編。
クラスメイトがどかどか死んでいるのに大した危険も感じず、好奇心だけで突き進む主人公に転校生のお嬢様を設定したのがまず上手い。
読者を騙してやろう、驚かしてやろうという気はほとんどなく、冒頭から動機や犯人像があからさまに明示される親切設計で、解決編が始まる頃には真相の9割が読者にも見えているだろう。残り1割も答え合わせに過ぎないが、そのぶん納得の行く必要以上に丁寧な説明がなされる。
サプライズこそ無いもののその解決編の趣向が素晴らしく、作中でいったん(読者は一人もそう思わないが真知子にとっては)事件が幕を引いた後に意味深だったタイトル「死者の学園祭」が章題として出てくるのは実に心憎く(映画なら絶対ここで初めてタイトルが出る)、その解決方法もむちゃくちゃ不謹慎ながら面白いものだった。
青春小説らしいほろ苦い、しかし甘い結末も良く、国民的作家は初めから実に小説が上手かった。

全くの余談だが、クラスメイトが亡くなったことを告げた担任がポケットから千円出して、そのクラスメイトの親友に花を買ってきてくれと頼む下りには愕然とした。昭和ってこんなに無法だったっけ?


22.12.13
評価:★★★ 6
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