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ミステリ感想-『殺人ドライブ・ロード』井沢元彦

2022年12月22日 | ミステリ感想
~あらすじ~
大富豪の娘の大沢良江は、浮気症の夫との二度目のハネムーン中に非業の死を遂げた。
良江の妹の沙織はボーイフレンドの飛田雄介を相棒に、義兄の英夫のアリバイ崩しの旅に出る。


~感想~
まず冒頭から100ページ以上続く、英夫がむちゃくちゃアリバイ工作しているハネムーン旅行が笑いを誘う。
良江がヨル・フォージャーくらいアホ…騙されやすいから成立してるだけの強引さで、読者には仕掛けにだいたいの見当がつくだろう。
続く妹の沙織パートは姉のハネムーンをそのままたどる推理行で、名所めぐりもほどほどに次々とアリバイを破りつつボーイフレンドといちゃつきまくる。
そして英夫のアリバイ工作を破り、物語は解決パートへと移り…正直なところ本格ミステリファンにはその先にもだいたいの見当が付いてしまうのだが、しかしもしかしてこれはアレがああなっているのでは?と膨らませていた期待を裏切らない、予想通りながら俄然盛り上がらざるを得ない結末には、わかっていても感心しきり。
時刻表をどうこうしてのアリバイトリックこそないものの、名所めぐりをしつつ美男美女がいちゃつく典型的な昭和のトラベルミステリでこれだけのザ・本格ミステリを披露されては恐れ入るしかない。
こんな無名の作品がこんなに良くできているなら、我々が手に取ることはない昭和のトラベルミステリには、まだまだ驚嘆すべき未知の本格ミステリが眠っているのではと思わせる傑作である。


22.12.22
評価:★★★★ 8
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