小金沢ライブラリー

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ミステリ感想-『赤きマント』物集高音

2002年09月20日 | ミステリ感想
~収録作品~
赤きマント
肉付きの面
歌い骸骨
魔女の箒


~感想~
連作ぎみ短編集。
……で、いったいなんだろうかこれは。
およそ読ませる意思のうかがえない煩雑な文体。
相手をあざけり、罵り、侮辱してばかりの読んでいてイライラする会話。
肝心の新解釈は明瞭な解決を拒み、衒学の煙で目くらましただけ。そこには娯楽性のカケラもない。
解るものだけ解ればいい。ついてこれるヤツだけついてくればいい。傲岸不遜な姿勢。
こうして感想を書くことすら腹だたしくてしかたない。これはもはや才能だ。
おそらく氏の作品を(作品?)二度と読むことはあるまい。


02.9.20
評価:論外
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ミステリ感想-『Jの神話』乾くるみ

2002年09月20日 | ミステリ感想
~あらすじ~
全寮制の名門女子高の生徒が、子宮から大量出血して死に、いたはずの胎児が消えた。
同じように変死した卒業生の姉、謎の言葉「ジャック」を遺し塔から身を投げた少女。
学園に封印されたおぞましい謎に挑む、女探偵『黒猫』と一年生の優子にも魔手が迫り……。
1998年メフィスト賞。


~感想~
第4回メフィスト賞受賞作。やはりメフィスト賞は奥が深い。
もはやミステリの体裁をなしていない異形の作品。メタ、SF、幻想……そんな概念では捉えられまい。
幻視者という表現こそ、氏にはふさわしい。
セリフに改善の余地はあるが筆力も新人にしては。また、面白い人が現れたものだ。ってかいたものだ。


02.9.20
評価:★★ 4
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ミステリ感想-『赤緑黒白』森博嗣

2002年09月19日 | ミステリ感想
~あらすじ~
深夜、マンションの駐車場で発見された死体は、全身を真っ赤に塗装されていた。
数日後保呂草は、被害者の恋人と名乗る女性から、事件の調査を依頼される。
解明の糸口が全くつかめないまま発生した第二の事件では、死体は色鮮やかな緑に染め上げられ……。


~感想~
Vシリーズ完結編。
ありゃりゃりゃりゃ……。どうやら主たるトリックは、シリーズ全体に仕掛けられていたトリックの方だった模様。
そうなると、1作目『黒猫の三角』の時点で見破っていた(プチ自慢)僕には楽しめなかった。
(ネタバレ→)それにしても、この暗号は何回目の使い回しだろうか? まあ毎度毎度気がつかない僕も問題だがw ところで、立松が撃たれる必然性ってあるのか?


02.9.19
評価:★☆ 3
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ミステリ感想-『朽ちる散る落ちる』森博嗣

2002年09月18日 | ミステリ感想
~あらすじ~
土井超音波研究所の地下。
出入りが絶対に不可能な完全密室で、奇妙な状態の死体が発見される。
一方、地球に帰還した有人衛星の中では、乗組員全員が殺されていた。


~感想~
(ネタバレ→)こんなに解りやすい物理トリックは初めてかも。物理トリックにつきものの「ふうん、そう」で済まされる、騙された、裏切られた気分に全くならない。(つまりはそれが騙されているということだろうが) 伏線・展開はシリーズファン以外を明らかに置き去りにしているが、実に緻密。傑作。


02.9.18
評価:★★★★☆ 9
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ミステリ感想-『人形幻戯』西澤保彦

2002年09月17日 | ミステリ感想
~収録作品~
不測の死体
墜落する思慕
おもいでの行方
彼女が輪廻を止める理由
人形幻戯
怨の駆動体


~感想~
『不測の死体』
伏線・逆転ともにうまい。珍しく動機よりもトリックに傾いてくれた佳作。

『墜落する思慕』
伏線は見え見えだが、真相の逆転がうまい。動機は例によって…。

『おもいでの行方』
終局の逆転と描写が秀逸――なだけ。

『彼女が輪廻を止める理由』
これは完全に動機だけの一編。(ネタバレ→)主題とはいえ傘をひっぱりすぎ。

『人形幻戯』
(ネタバレ→)ただ一点。なぜ能力を同時に発現できたかの説明を「偶然」で片づけているのが片手落ち。

『怨の駆動体』
短く鋭い本書中の白眉。タイトルといい、なにか伏線が張られたのだろうか。


~総括~
キャラたちの日常がさして描かれず寂しい。しぜん、ストーリーに進展もなく物足りない。
トリックも動機がメインで、いつもの緻密さはない。
マンネリを避けたのだろうが、逆に西澤臭・西澤味が濃くなりすぎて空回りした感も。


02.9.17
評価:★★☆ 5
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ミステリ感想-『転・送・密・室』西澤保彦

2002年09月16日 | ミステリ感想
~収録作品~
現場有在証明
転・送・密・室
幻視路
神余響子的憂鬱
〈擬態〉密室
神麻嗣子的日常


~感想~
『現場有在証明』
(ネタバレ→)サイフのくだりが肝である一方、アキレス腱にもなったような。逆にトリックが脆弱になった印象。

『転・送・密・室』
見事な逆転。(ネタバレ→)タイトルからして「瞬間移動死体」を想起させるが、その逆をつくとは。

『幻視路』
あからさまなどころか、そのまんまの伏線はいさぎよさを通り越して安易では。

『神余響子的憂鬱』
動機がすこし……。新キャラ二人は強烈でお目見え編か。

『〈擬態〉密室』
トリックは本書中、最も強引。短編でもストーリーが動きだしたのはいい。

『神麻嗣子的日常』
さすがは西澤保彦。普通の着地はしない。矛盾を山と抱えそうだが面白くなった。ってか後付けだろ絶対!


~総括~
西澤氏にしては切れ味を欠いた作品ばかりだが、ストーリーが思わぬ方向に転がりだしたのは期待が持てる。
シリーズファン必読。


02.9.16
評価:★★★☆ 7
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ミステリ感想-『夢幻巡礼』西澤保彦

2002年09月14日 | ミステリ感想
~あらすじ~
「ひとを殺すことが、こんなにも、おもしろいとは思ってもみなかった」
能解匡緒の部下・奈蔵渉は、警察官でありながら連続殺人鬼。
自己の狂気を冷徹に見つめる奈蔵が、かつて遭遇した密室殺人が十年後、再び新たな闇の扉を開く。


~感想~
読後感がいいわけもない、暗くおぞましい一作。
シリーズに伏線を張るための作品がこれでは、明るくにぎやかだった本編に影を落とし、ファンが減ったりしないだろうか?
謎解きがなんとなく篠田真由美っぽいと思うのはたぶん僕だけか。


02.9.14
評価:★★☆ 5
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ミステリ感想-『木乃伊男』蘇部健一

2002年09月13日 | ミステリ感想
~あらすじ~
はるか昔、布部家を襲ったミイラ男の伝説。
鏡の迷路という密室での兄の不可解な死に続き、ミイラ男の影はいよいよぼくのもとへと忍び寄ってくる。
はたしてミイラ男が顔の包帯を取ったとき、現れるのはいったい誰の顔なのか。
里中満智子氏の手による、絵で犯人がわかる全く新しいタイプの推理小説。


~感想~
密室本。
凡庸な異色作(妙な言葉だが)に終わりかけたところで、結末に(強引かつ無理とはいえ)見事なオチを付けた。
もっとふざけていれば印象も変わっただろうが、少々マジメに書きすぎてしまったか。
明らかに行数を増やすためだけの会話(「え?」「……。」など)が多々目につくのも不満。
ただ、密室本の中では最も密室本という性質を活かした部類ではある。


02.9.13
評価:★☆ 3
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ミステリ感想-『試験に敗けない密室』高田崇史

2002年09月10日 | ミステリ感想
~あらすじ~
天才高校生・千波くんらいつもの3人組が、
土砂崩れで『脱出不能の十三塚村』、『神裁きの土牢』など、つぎつぎ現れる密室の謎に挑む。


~感想~
と、前作からして期待していたのだが……。
比喩の切れ味は薄く、筆力も落ちたような。トリックも物理トリックばかりで好みに非ず。


02.9.10
評価:★☆ 3
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ミステリ感想-『樒/榁』殊能将之

2002年09月02日 | ミステリ感想
~あらすじ~
「天狗を目撃した」という宮司がいる荒廃した寺で、御神体の石斧が盗まれた。
斧が発見されたのは完全な密室の中。
おびただしい数の武具を飾る旅館の部屋の扉を破ると、中には頭を割られた死体と脅迫状が。
驚愕の真相と名探偵の推理とは?


~感想~
密室本。
例によって値段不相応の分量だが、凝縮されたような印象。二重構造は『安達ヶ原の鬼密室』を喚起させたりさせなかったり。期待はそれなりに裏切らない。


02.9.2
評価:★★★ 6
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