小金沢ライブラリー

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ミステリ感想-『最後の記憶』綾辻行人

2002年10月08日 | ミステリ感想
~あらすじ~
痴呆症を患い、ほとんどすべての記憶を失いつつある母親。
彼女に残されたのはただ一つの恐怖の記憶だけ。
バッタの飛ぶ音、突然の白い閃光、血しぶきと悲鳴、惨殺された子どもたち。
死に瀕した母親を苦しめる、最後の記憶とはいったい……?


~感想~
ひっさびさの新作は、幻想とホラーとミステリの融合体とでも呼ぶべき異形の作品。
トリックやプロットよりも、雰囲気でぐいぐい押してくる。
決して流麗とも平易ともとれない硬質な文体だが、読む者をつかみ世界に引きずり込む手腕はさすが。
音と色を鮮やかに幻視させる。どうでもいいが……カバー裏の赤色が目に痛すぎる。


02.10.8
評価:★★★☆ 7
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ミステリ感想-『魔神の遊戯』島田荘司

2002年10月07日 | ミステリ感想
~あらすじ~
ネス湖畔の小村を襲う恐怖。人間離れした力で引きちぎられ、奇怪に配置された死体。
これははたして魔神のしわざなのか? 戦慄の事件に御手洗潔が挑む。
このミス16位、本ミス10位


~感想~
流石。まず頭に浮かぶのはこの二文字。大上段の物理細工ではなく、構成に仕掛けを施したのは意外。
重厚さと豪奢さ、読者を引きつけてやまない豪腕は衰えるどころかますます冴えてきた感も。
(ネタバレ→)読了後、1ページを見返して誰もが目を疑うだろう。すくなくとも僕は疑った。僕が鈍いだけ? とにかく用意周到。まさかの叙述トリックまで使われ、いままでとは少々毛色が違う。真相のとある部分が、森博嗣の某長編とおなじ着想に思えたのは僕だけだろうか? ……ってこんなあやふやな言い方では通じないなあw


02.10.7
評価:★★★★☆ 9
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ミステリ感想-『死者を笞打て』鮎川哲也

2002年10月04日 | ミステリ感想
~あらすじ~
鮎川哲也の作品「死者を笞打て」に盗作の嫌疑がかかる。10年前に謎の女流作家が書いた作品そっくり、というのだ。
世間の非難にあい仕事が途絶えた鮎川は身の潔白を証明するためその女流作家を探し出し、対決しようとする。


~感想~
氏の諧謔味が存分に発揮された快作。トリック云々などどうでもいい。(暴言)
どこまで真実か解らない、逸話の数々がまっこと愉快愉快。
竹本健治の『ウロボロス』はこれの模倣にしかすぎないのやも。


02.10.4
評価:★★★ 6
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ミステリ感想-『掌の中の小鳥』加納朋子

2002年10月03日 | ミステリ感想
~収録作品~
掌の中の小鳥
桜月夜
自転車泥棒
できない相談
エッグ・スタンド


~感想~
連作(?)短編集。
氏にしては――の印象はぬぐい去れない。そんななかで燦然ときらめくのは「自転車泥棒」。これは傑作。
余談だが、ネットに掲載されたらしい解説があまりにも酷い。
こんなもの、解説を標榜するただのヘタクソきわまりないネタバレ付きあらすじだ。


02.10.3
評価:★★★☆ 7
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ミステリ感想-『王を探せ』鮎川哲也

2002年10月02日 | ミステリ感想
~あらすじ~
だから、どの亀取二郎が犯人なんだ!?
亀取二郎は、二年前の犯罪をネタに恐喝されていた。耐えきれず、彼は憎き強請屋を撲殺する。
警察が被害者のメモから掴んだのは、犯人が「亀取二郎」という名前であること。
だが、東京都近郊だけで同姓同名が四十名。
やっと絞りだした数人は、みなアリバイをもつ、一筋縄でいかない亀取二郎ばかりだった。


~感想~
これも本当に読みやすい。軽妙かつ平易な筆致は、時代を超えて色あせず、卓抜の冴え。
本筋とは外れるが、あとがきがいい。今まで目にした1000を越えるあとがきの中でも最高峰。
作者の人柄がしのばれる。
肝心の物語も、趣向・構成ともに丹念に磨かれた良作。さすが本格の父。


02.10.2
評価:★★★ 6
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ミステリ感想-『絶叫城殺人事件』有栖川有栖

2002年10月01日 | ミステリ感想
~収録作品~
黒鳥亭殺人事件
壺中庵殺人事件
月宮殿殺人事件
雪華楼殺人事件
紅雨荘殺人事件
絶叫城殺人事件


~感想~
『黒鳥亭殺人事件』
井戸に落ちたくだりは思わず本を取り落としかけた。て、天使って……ぷぷぷ。
どうせ暗いなら、二十の扉も昏黒にまみれさせればいいのに。

『壺中庵殺人事件』
トリックだけの一編。

『月宮殿殺人事件』
これはなかなかの出来。ただ、後書きでトリックをほのめかしてるのはこっちのほうだ。
もっと浜さんをうまくからめていれば……。

『雪華楼殺人事件』
世紀の駄作『ペルシャ猫の謎』をほうふつとさせる、事例があれば(たとえ後発とはいえ)なんでもいいんかいと言いたくなるもの。魅力的な謎がガッカリの結末を迎える。
会話のくだりは陳腐さに爆笑した。

『紅雨荘殺人事件』
終盤すこしごたついた。処理がうまければ、好印象だったろうに。

『絶叫城殺人事件』
神経症的な物言いをしているのは、いったいどちらでしょう?
ハンパな解釈。緻密ならざる真相。便利な言葉で煙に巻いたのは、はてさて誰でしょう?


~総括~
いたって退屈。調子が悪いのか、これが常態なのか。ううむ。


02.10.1
評価:なし 0
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