小金沢ライブラリー

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ミステリ感想-『捕まえたもん勝ち! 2 量子人間からの手紙』加藤元浩

2017年12月16日 | ミステリ感想
~あらすじ~
量子人間を名乗る人物から、マフィアに殺された女性の復讐として7人に殺害予告が下る。
まるで量子力学のように密室を自在に出入りし犯行を重ねる犯人に、捜査一課に配属されたばかりの元アイドル七夕菊乃警部が挑む。


~感想~
最強ミステリマンガ「Q.E.D.証明終了」で知られる作者の小説第二作。
前作では2つの事件を描き、菊乃のアイドル・新人刑事時代に筆が費やされたため全体的に薄味だったが、本作は説明パートが終わり事件も1つに絞ったことで濃縮された。
文章も「とりあえず読みやすい」だけだった前作から大幅に腕を上げ、菊乃の「Q.E.D.」シリーズのヒロイン水原可奈(※人外の豪傑)を正義感や快活さをそのままに計算高くし、強さを人間の範疇に近づけたようなキャラもあいまってまるで「Q.E.D.」を文字だけで読んでいるような感覚すら覚える。

そしてなんといっても特筆すべきは、作者の真骨頂である数学ネタを全面に押し出してきたこと。
某●る館ミステリとは段違いのわかりやすさで量子力学を紹介し、それを事件に絡めるのみならずトリックや犯人像、さらには手掛かりにまでつなげて見せた手腕は、まさに小説版「Q.E.D.」の風格。

前作の感想では「別に今まで通りマンガだけ描いていてくれればいいかな、というのが一ファンの偽らざる本音である」などと失礼なことを言ってしまったが、こんなに面白いミステリ小説を書いてくれるなら、伏してお詫び申し上げ第三作を心待ちにしたい次第である。


17.12.13
評価:★★★☆ 7
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SCP-1201~1210

2017年12月15日 | SCP紹介
SCP-1201 - Zoroaster's Well (ゾロアスターの泉)
シリアのダマスカスにある壁泉。毎年の同日同時刻に周囲にチンパンジーによく似た負傷した生物が現れ、壁泉に飛び込み消失する。インタビューや調査の結果、壁泉の中で何者かと戦っていると思われる

SCP-1202 - Lost Voice (失われた声)
カナダの凍った湖の下から発見された男性の死体。触れた相手に心の声で理論物理学や生物学等の講義をする。恐ろしく饒舌で20秒以上黙ることが無いため、精神を病んだ被験者は安楽死を要求する

SCP-1203 - Ouroboros (ウロボロス)
メキシコで発見されたミランダという名の女性。21歳になると単為生殖で受胎し、出産とともに死亡する。産まれた娘は遺伝的に母親と全く同一で記憶も受け継いでいる

SCP-1204 - Clingy Transient
未翻訳

SCP-1205 - Wallflower
未翻訳

SCP-1206 - Lost Muse
未翻訳

SCP-1207 - Not a Mirror (鏡ではない)
「THIS IS A MIROR YOU ARE A TYPO(これはかかみだ おまえはタイポ)」と書かれた看板。視認した人物はこれを鏡と認識し、急速に身体醜形障害を患い自身を醜いと思い込み、過度な化粧や自傷行為に走る。さらに失読症を起こし鏡(MIRROR)をかかみ(MIROR)と必ず誤記する。本物の鏡を見せると回復する

SCP-1208 - WaffleMaster 3000 (ワッフルマスター 3000)
ワッフルメーカー。中に入れられる大きさなら何でもワッフルに加工出来る

SCP-1209 - Many Eyes in Many Places (多所多眼症)
眼球内に複数の瞳が出来る病気。別の瞳はその人物の誕生から2時間以内に産まれた人物の視界とリンクしている。ある化学物質で汚染された水源の近くで産まれたこととの関係性が疑われている

SCP-1210 - Anomalous Radar Station (奇妙なレーダー基地)
ロシアのある孤島と廃棄されたレーダー施設。電源が無いにも関わらず不定期に異常なレーダー波を放ち、付近の動植物や地形に変化をもたらす
コメント

SCP-1191~1200

2017年12月14日 | SCP紹介
SCP-1191 - Criminal Past (犯罪歴)
腐った柳の枝。暴力犯罪歴を持つ人物が触れると、罪を犯したのと同時刻のアリバイを植え付けられ、自分は冤罪だという妄想に囚われる。接触から40時間を掛けて徐々に元の記憶を取り戻す。枝の能力を知覚していれば、容器に入れた状態で触れたり、トングや遠隔操作機器を用いて間接的に接触しても発症する

SCP-1192 - "Timmy" ("ティミー")
6~8歳の子供と同等の知性を持つオウム。自身を人間と認識しているようで紙と鉛筆を用い絵を描く。頭部に挫傷があるが関連は不明

SCP-1193 - Buried Giant (埋まった巨人)
アリゾナ州の地下排水管に埋まった人間の腕。4kmごとに肘があり、71km以上まで続いているのが確認された。腕の持ち主とは地上にある電話を通じて会話出来るが、彼は入院中で拘束されている等の現状と噛み合わないことを主張し、退屈や不快を訴える

SCP-1194 - Damaged Toy Horse
未翻訳

SCP-1195 - Child's Storybook (児童書)
古い革装丁の白紙の本。話を語ることをせがみ、語り掛けたり記述すると即座に文字が浮かび上がる。話の展開によって批評を加えたり本を閉じ終了させたりする。その内容や言葉遣いから子供と思われる

SCP-1196 - Chairopractors (手が無い指圧師)
ある脊椎クリニックの地下階。そこに運び込まれた椅子は知覚と言語能力を獲得し、30分以上滞在した人間に健康指導する。しかし60分を過ぎると攻撃を始め、殺害に至ると謝罪しながらシャベル等で必死に死体を埋めようと試みる

SCP-1197 - Room For One (一人だけの部屋)
あるホテルのスイートルーム。西側の扉を開いた先は全く同じ部屋になっており、使用者と全く同じ人物がいる。どちらかが殺されるまで部屋から出ることは出来ない

SCP-1198 - Endless Echo (果てない山彦)
37.2秒のwav音声ファイル。人間の耳には聴こえない高周波が収録されており、35~65デシベルで最後まで聴くと、自分の立てるあらゆる音(呼吸や足音、運転する車のエンジン等)が反響して聴こえるようになる。48時間が経過すると反響音は常に鳴り続けるようになり、聴覚への過負荷から精神病を引き起こす

SCP-1199 - Fleshtone Paint (肌色ペンキ)
古いペンキ缶と塗料。塗って乾燥させると人間の皮膚と同じ性質を持つ

SCP-1200 - With A Little Taste Of Factory (ファクトリーの一口おやつ)
チューインガム。「ルービックキューブのような味」、「忘れ去られた者たちのような味」等の名前が付けられており、食べると名前に応じた異常な効果が現れる



1101~1200で好みは、
SCP-1101 - An Interesting Topic (興味深い話題)
SCP-1108 - A Swamp God (沼地の神)
SCP-1122 - The House of Tomorrow (未来の家)
SCP-1126 - Agent Palmer (特殊工作員パーマー)
SCP-1151 - A Handy Marker (ハンディ・マーカー)
SCP-1152 - A Common Raccoon (アライグマ)
SCP-1160 - Effective Containment (実効的収容)
SCP-1173 - The Islamic Republic of Eastern Samothrace (サモトラケ東部イスラム共和国)
SCP-1193 - Buried Giant (埋まった巨人)
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酷い三国志の記事を正す

2017年12月13日 | 雑文
我が愛する三国志の酷い記事を見かけたので誤りを正させてもらう。
ファンの端くれとしてこういった「正しい情報を装った嘘八百」は大嫌いである。

元記事 → 三国志の英雄たちは実は「ダメ上司」だった 曹操・諸葛亮は「リーダーの反面教師」だ


後漢の歴史家・陳寿

陳寿は233年生まれ。後漢は220年に滅びている。正しくは蜀または魏か晋の歴史家。


劉禅は完全な「お金持ちのドラ息子」で、諸葛亮が病死するとあっさりと魏に自国を明け渡すと、自らは生き残り、生涯遊んで暮らします。

蜀の滅亡は諸葛亮の死から29年後。劉禅はその7年後に死亡した。享年65。あっさり明け渡しただのドラ息子だの生涯遊んで暮らしただのと呼べるだろうか。また陳寿は劉禅をドラ息子どころか無能などとは一言も書いていない。


袁紹はお気に入りの参謀・郭図の甘言ばかり採用しました。

同じ参謀なら郭図よりも審配や逢紀の方が重用されている。郭図は袁紹の子の袁譚により重用されより酷い失策を重ねた。


郭図と張コウは別々の場所に兵を送ることを進言します。この際、袁紹は軍を二手に分けて攻撃するという優柔不断な戦略をとり、全軍が共倒れして大敗してしまいました。自分の君主が郭図の進言ばかり聞くことに反感を抱いていた張コウは、ついに袁紹を裏切り、敵である曹操に寝返ってしまいます。

張郃の部隊は敗れておらず共倒れしていない。また「張郃伝」こそ郭図の讒言と書いているが「武帝紀(曹操伝)」や「袁紹伝」では讒言はしておらずそもそもその前に降伏している。だいいち部隊を二手に分けているなら張郃の進言も聞いているわけで不満は無いはずである。実際には張郃は「二手に分けず一方に兵を集めろ」と進言したのを退けられ不満を持ったのである。


袁紹は息子(袁尚)の病気を理由にこの進言を採用せず

すでに成人していた袁尚ではなく赤子である。wikiに袁尚と書かれているのを鵜呑みにしているだけ。


田豊は「すでに勝機を逃し、今戦えば大敗する」と反対します。これに腹を立てた袁紹は、「田豊がわざと自分の考えに反対している」と、彼を投獄してしまいます。

田豊が投獄されたのは戦いに反対したからではなく「すでに好機を逃している」と袁紹の急戦に対し持久戦を提案し、執拗に諫言したため「田豊は反対ばかりで全軍の士気をくじく」と激怒されたからである。


彼の強みは、神がかった人材登用術でした。「赤壁の戦い」では周瑜を用いて魏を破り、「荊州攻め」では呂蒙を用いて関羽を破り、「夷陵の戦い」では陸遜を用いて劉備を破るなど、「当たり采配」によって強固な地盤を築きます。

周瑜も呂蒙も元から指揮官であり孫権がその戦に際し抜擢したわけではない。陸遜は確かに抜擢だろう。


孫権は自らが建国した呉を滅ぼす遠縁をつくってしまいます。

遠因の誤り。


赤壁の戦いで魏を倒してから35年が経ち、呉も順調に発展して、余裕が出てきた時期です。

魏(曹操)軍の侵攻を一時的に退けただけで別に倒してはいない。それどころか数年後には魏に降伏している。まるで赤壁の戦いを制したおかげで35年間平和だったかのような書き方はいかがなものか。


孫権は陸遜を含めた優秀な配下を次々と処刑してしまいます。

陸遜は処刑されていない。長らく流刑にされたと言われていたが近年の研究ではそれすらされていない。


一方、魏でも曹操の息子たちである曹丕と曹植が後継者争いを行いましたが、曹操は曹丕を後継者に指名したことで争いは収まり、後の世代でも安定した治世が続きました。

曹操もなかなか後継者を決められず曹丕と曹植は暗闘を繰り広げた。曹丕は即位後に曹植を遠流し、その一派である楊修や丁儀兄弟らを処刑した。曹丕は即位後わずか8年で没し、以降は幼君が続き魏は3代目から早くも傀儡政権を敷かれた。はたして安定した治世が続いたと言えるだろうか。


普段、曹操は、賈詡や程昱などの参謀の言うことによく耳を傾けました。しかし、天下統一を目前にして意識が高揚し、冷静な判断を欠いていたのです。こんなときこそ慎重になるべきですが、あの曹操でさえもそれは難しかったようです。

そもそもこの荊州征伐自体が参謀の筆頭格である荀彧の立案である。参謀は賈詡と程昱だけではなく、無数の献策から選択しているのであり、曹操の独断専行と言うのは筋違い。ついでに言えば賈詡は曹操に仕えて10年も経っていない新参で、しかも宛城の戦いで曹操を殺しかけた人物でもある。


愛弟子の馬謖にある戦いを任せましたが、命令違反をした馬謖は大敗してしまいます。

馬謖が愛弟子というのがまず「演義」の脚色である。諸葛亮が「街道を固めよ」と命令したのは「演義」の話であり、馬謖は判断ミスから山上に陣を構えて大敗した。


諸葛亮は人材を用いることをやめ、将軍の姜維などの一部の者を除き、後継者を育てることをしませんでした

諸葛亮がいつ人材を用いるのを辞めたのだろうか。死後に丞相の座についた蔣琬や費禕は後継者ではないのか。


諸葛亮はその後まもなく病で倒れ、人材が育たなかった蜀はあっさりと魏に征服されてしまいます。

前述した通り蜀の滅亡は諸葛亮の死から29年後でありあっさり征服されていない。29年後の滅亡まで諸葛亮の育成失敗のせいと片付けられるのか。


以上細かいあげつらいをしたがそもそも、

群雄たちの活躍の多くは、実は後年の作家・羅貫中の小説『三国志演義』による“創作”にすぎない。
実際の英雄たちの姿は、後漢(※晋)の歴史家・陳寿が記した歴史書・『正史 三国志』に記されているが、フィクションのヒロイックな姿とはかけ離れた、「リアルなリーダー像」が描かれている。

と最初にぶち上げているが、今回紹介している逸話はほぼ全部が「三国志演義」でも描かれているし「演義」限定の逸話も多々あるのだが、「演義」をわざわざ「“創作”にすぎない」と貶める必要はあったのだろうか。

「演義」を不当にこき下ろし、正確な知識を用いず、詳しくない人々に誤った情報をばらまく。
我々三国志ファンが最も嫌い、最も許せない行為である。筆者には猛省を促したい。
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ミステリ感想-『ディレクターズ・カット』歌野晶午

2017年12月12日 | ミステリ感想
~あらすじ~
TV局ディレクターの長谷見潤也は、無免許運転の罪をかぶってやった学生らを使い、やらせでスクープ映像を作り名を上げていた。
だがそれも下火になった頃合いに、学生の一人が通り魔に襲われる。長谷見は一発逆転を狙い、通り魔の行方を追う。


~感想~
つくづく器用な作者で、無軌道な若者や、暴走する通り魔の描写は実に達者。相当詳しくないと誰が書いても不自然になるネットの反応も違和感なく、キャラ立ちした面々が動き回る物語もわかりやすくテンポよく進み、結末まで一息に読ませる。
よく考えるとそれなりに複雑な話なのだが、歌野晶午の手に掛かると極めて単純かつぶっちゃけ想像通りの筋立てに展開されるのがお見事。
厳しいことを言えば作者ほどの実力者がわざわざ書くような内容ではない気もするが、それは難癖というものだろう。
器用になんでもそつなく書く才人の作者だが、ノンシリーズ作品は当たり外れが大きい。
本作はどちらかといえば外れの部類だが、それでもあっさり読めてあっさり楽しめる、まさにバラエティ番組のような一冊である。


17.12.9
評価:★★★ 6
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今週のキン肉マン #228 正義の洞穴!!

2017年12月11日 | 今週のキン肉マン
・確かにスグルは屁で飛ぶより走ったほうが速いが、超人委員会は飛行機くらい手配しろ
・ワープゾーンwww
・1ページぶち抜きジャスティスマンかっこいい
・お前が参戦したら楽勝だけど、超人の歴史への介入は最低限で済ませる考えか
・超人オリンピックの時の紹介写真をリメイクだ!!
・義憤で怒り狂う設定は読み切りからだな
・逆さになってもこぼれないカレー
・逆さになってもこぼれないカレーを足で固定する意味よ
・ヨガを織り交ぜたファイトスタイルいいな。ストリートファイターにいそう
・最後のはパーフェクトアセイラントだ
・カレクック普通にマリキータを圧倒
・死んでもいいからクソ力を引き出せ命令に従いまずは攻めさせているのか?
・義憤で怒るなら誰かを人質に取りそうだが
・委員長かノックが危ない!
・運営側を襲うと困るのは自分達だし、そういう卑怯な手は使わないよな
・ミートがいるならミートが危険だがむしろスグルが怒るし
・生きてたら虫の息のカナディアンマンやベンキマンが標的か?
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ミステリ感想-『歳時記(ダイアリイ)』依井貴裕

2017年12月10日 | ミステリ感想
~あらすじ~
類まれな推理力を持つ多根井理は、自殺した大学の先輩の父親から、遺品の原稿を預かる。
そこには先輩をモデルにした人物の他、理だけが本名で登場しており、実際に起こった連続殺人事件が描かれていた。
先輩の自殺の動機はその物語の中にあるのか?

1991年このミス17位、日本推理作家協会賞候補


~感想~
あるトリックにいの一番に気づき、ただの捨てトリックだと思っていたら物の見事にメイントリックだった。
通常ならトリックに気づいても評価は変わらないが、事前にヒントを出し過ぎだし、これに引っ掛かる読者が果たして何割いるのだろうかと危ぶむほどにわかりやすくもあるため、正直いただけない。

山ほどの伏線や挑戦状を付すフェアプレイぶり、ガチガチの論理展開は素晴らしいのだが、明らかに伏線で使われる気満々の「輪ゴムが目にするのも嫌なほど苦手」とか「裸足主義」などの設定も強引すぎるし、いかんせん端から結果のわかっている消化試合を見せられている感が強かった。
また最後に明らかになる動機が全ミステリの中でも上位を争うほど酷いもので「言えよ!! 戦えよ! 絶対に守りたいものがあるんだろ!?」と主人公を励ます相棒キャラのように声を大にして叫びたくなる。いや本当に言えって! 言えばいいじゃない!!  

到底、看過できない欠点は多々あるものの、パズラーとしての魅力は非常に大きく、琴線に触れる読者も多いことだろう。
入手困難だが興味があればぜひ探してみることを勧めるし、その際にはあのトリックに気づかないことを祈るばかりで……いや絶対気づくよなあ、あれは……。


17.12.5
評価:★★★ 6
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文春と本ミス2017についてなんやかや

2017年12月09日 | ミステリ界隈
文春
01.今村昌弘 屍人荘の殺人  ★★★★ 8
02.柚月裕子 盤上の向日葵
03.伊坂幸太郎 ホワイトラビット
04.有栖川有栖 狩人の悪夢
04.月村了衛 機龍警察 狼眼殺手
06.長岡弘樹 教場 0
07.伊坂幸太郎 AX
08.米澤穂信 いまさら翼といわれても
09.宮部みゆき この世の春
10.辻村深月 かがみの孤城
10.貴志祐介 ミステリークロック


文春はこのミスや本ミスと変わりないラインナップの中に、伊坂をもう一作と宮部、長岡を入れることで個性を出してきた。「屍人荘」の1位は文春としては意外な感も。いずれ劣らぬ人気作家ばかりの中で堂々の戴冠はやはりすごい。


本ミス
01.今村昌弘 屍人荘の殺人  ★★★★ 8
02.有栖川有栖 狩人の悪夢
03.阿津川辰海 名探偵は嘘をつかない
04.貴志祐介 ミステリークロック
05.市川憂人 ブルーローズは眠らない  ★★★★ 8
05.早坂吝 双蛇密室  ★★★★★ 10
07.西澤保彦 悪魔を憐れむ
08.伊坂幸太郎 ホワイトラビット
09.青木知己 Y駅発深夜バス
09.鳥飼否宇 紅城奇譚  ★★★☆ 7


並み居る強豪を退けて「屍人荘」が三冠達成。その他にもこれがデビュー作となる阿津川、再デビューの青木と新人作家が計2.5人ランクイン。10点を付けた早坂も5位に輝き個人的には満足した。
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このミス2017についてなんやかや

2017年12月08日 | ミステリ界隈
01.今村昌弘 屍人荘の殺人  ★★★★ 8
02.伊坂幸太郎 ホワイトラビット
03.月村了衛 機龍警察 狼眼殺手
04.貴志祐介 ミステリークロック
05.古処誠二 いくさの底
06.有栖川有栖 狩人の悪夢
07.青山文平 遠縁の女
08.辻村深月 かがみの孤城
09.柚月裕子 盤上の向日葵
10.山本巧次 開化鐡道探偵
11.市川憂人 ブルーローズは眠らない  ★★★★ 8
12.深町秋生 地獄の犬たち
13.宮内悠介 あとは野となれ大和撫子
14.藤田宜永 タフガイ
15.鮎川哲也 鮎川哲也探偵小説選
16.岡田秀文 帝都大捜査網
17.米澤穂信 いまさら翼といわれても
18.相沢沙呼 マツリカ・マトリョシカ
18.太田愛 天上の葦
18.佐藤正午 月の満ち欠け


「屍人荘の殺人」がかの「容疑者Xの献身」以来の三冠達成となった。
某先生は自身も新作を出してそこそこ評判を呼んでいたがランク外になっており、また噛み付いたりしないだろうか。どこからどう見ても「屍人荘」は本格だから大丈夫だとは思うが。

それはともかく昨年はこのミス・文春・本ミス・早ミスは4つ揃って1位が異なり話題を呼んだが、10月出版のため早ミスは対象外となり、来年の今頃に「屍人荘」をランクインさせるという失態を演じることとなった。
そもそもミステリ業界は、投票者に直近のインパクトを与えるためこのミス期限である10月に合わせて意欲作を出す傾向にあり、9月で締め切る早ミスはしばしば話題作を逃すことがあったが、今年は海外版の方でも準三冠(二冠+2位)を達成した「13・67」が9月末出版だったため取りこぼしてしまい、しかも来年のランキングにも対象外という有様で、早ミスの世界線には「13・67」が存在しなくなってしまった。あわせて五冠を華麗にスルーという醜態をさらしては、自分も前々から主張している通り、早ミスはいらない子であるということを満天下にアピール出来たのではなかろうか。

このミスに戻ると、例年通り人気作家が上位に名を連ねるなか久々に、本当に久々に古処誠二が出てきて驚いた。戦争小説専従になったと思っていたが、本作は戦争を描きつつもミステリとして優れているそうで興味津々。
昨年「半席」でランクインした青山文平はまたも時代小説で7位に。官能小説みたいな表紙でなければもっと売れたのでは。

自分が読んだのは1位の他に「ブルーローズ」だけ。今年は結構読んだのになあ。「帝都大捜査網」は微妙な評判だったから外したのに。伏線皆無の性癖レスバ…「ルビンの壺が割れた」や「N、N?」は意外にも(そう意外にも)ランクインせず。投票者にはまだ良識が残っていたらしい。
しかしそこまで傑出していたとは思えない「屍人荘」が総なめしたことからしても、やはり今年は不作の年だった、と言えるだろう。
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2017私的このミスベスト20

2017年12月07日 | ミステリ私的ランキング
01.陳浩基 13・67  ★★★★★ 10
02.早坂吝 双蛇密室  ★★★★★ 10
03.市川憂人 ブルーローズは眠らない  ★★★★ 8
04.宇佐美まこと 愚者の毒  ★★★★ 8
05.今村昌弘 屍人荘の殺人  ★★★★ 8
06.天祢涼 希望が死んだ夜に  ★★★★ 8
07.似鳥鶏 彼女の色に届くまで  ★★★★ 8
08.月村了衛 機龍警察 狼眼殺手  ★★★★ 8
09.青山文平 遠縁の女  ★★★★ 8
10.浦賀和宏 ifの悲劇  ★★★☆ 7
11.伊坂幸太郎 AX  ★★★☆ 7
12.加藤元浩 捕まえたもん勝ち! 2 量子人間からの手紙  ★★★☆ 7
13.鳥飼否宇 紅城奇譚  ★★★☆ 7
14.伊坂幸太郎 ホワイトラビット  ★★★☆ 7
15.早坂吝 ドローン探偵と世界の終わりの館  ★★★☆ 7
16.初野晴 ひとり吹奏楽部 ハルチカ番外篇  ★★★☆ 7
17.鮎川哲也 鮎川哲也探偵小説選  ★★★☆ 7
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