最近NHKが無邪気そうな男女アナウンサーに妙な口上を述べさせている。まるで消費者金融が流す詐欺的なインノセント広告みたいだ。
― 公共放送をまもるために皆様の公平な負担をお願いいたします -
てなことをヌケヌケとしゃべらせている。まず公共放送とは何かを説明すべきだろう。まさか、ドラマとか歌謡番組が公共放送とは強弁できまい。そして公共放送のためにはコストがどれくらいかかるか、資料を公表すべきだ。おそらく今のNHK予算の十分の一、百分の一ですむだろう。
ニュースは公共放送といえるが、民放でもニュースを流している。公共放送のためにNHKを残しておく必要性もないだろう。小泉首相は「民間で出来るものは民間で」と選挙で声を張り上げていたが、郵便事業(つまり赤いポスト関連)については民間で出来るはずだ、というだけで現実には民間では行われていない。これを強引にやろうというわけだ。それにくらべれば、放送事業では民間でも公共放送はすでに実施している。NHKを残す理由は小泉さんにとってはまったくないはずだ。
小泉首相が個人的怨念で郵政民営化を強行したというなら話が違ってくるが、もし、郵便事業の民営化が国政の最大問題(つまり選挙の唯一のテーマになるほどの)ならば、放送事業の民営化はとっくの昔にやっていなければならない。それとも、小泉首相はダブル・スタンダードを決め込むつもりなのか。
遅ればせながら(言う機会がなかったものだから)郵政民営化について感想を記しておこう。郵便貯金などの金融事業は、明治の昔から民間の銀行が行っている。またそこで集めた膨大な資金が民業を圧迫し、官僚や政治家に恣意的に使われていることにかんがみて、民営化に大賛成である。信書などの郵便事業については率直にいって、民間業者にまかせることに不安がある。赤字になっても(大して赤字にもなるまい)、やはり官業にするほうが安心だと思っている。金融事業の民営化のどさくさにまぎれて一緒に民営化するのは問題である。
ただしダイレクト・メール(DM)は普通料金あるいは割り増し料金でないかぎり官がやるべきではない。いまのDMのための割引は国民の信書郵便のコスト負担の上におこなわれている(subsidizeされている)。許すことが出来ない。民間業者にまかせれば適切なコスト計算にもとづく料金設定をするだろう。