「おおばくち、身ぐるみ剥がれて、スッテンテン」の作者はわかりましたか。
満州映画社長、甘粕正彦元憲兵大尉であります。彼の辞世の句ともいうべきものだ。ソ連軍の戦車がせまる新京市内で服毒自殺したときに残したものと言われる。
彼は関東大震災の時に「主義者」大杉栄一家を撲殺か絞殺したかで、軍籍をはく奪され、のち満州映画社長となった。
さて、日本陸軍は国民に「パンとサーカス」を与えることによって国民を熱狂させ、大正の行革を封殺した。「サーカス」とは連日新聞をかざる帝国陸軍の戦勝記事である。今のテレビのワイドショーで連日のタレントネタで熱中する日本人とおなじである。
国民は飽きっぽく、すぐにそっぽを向く。現代と同じである。じゃによって、毎日、見世物を提供しなければならない。帝国陸軍は自転車操業である。毎日、戦勝ニュースを新聞紙面に提供しなければならない。オリンピック報道のようなものだ。各種のスポーツ報道とまったく同じである。
そうしないと、自転車は倒れてしまう。たえずペダルを漕いでいなければならない。毎日戦勝のネタを提供する限り、朝日新聞は徹頭徹尾、帝国陸軍の味方であった。
毎日朝起きると芸能面や社会面をチェックするようなタレント事務所の社長のような連中が帝国陸軍の中枢だったのだ。
マスコミによって作られる世論というものは、マスコミというゴロツキ、無頼漢に影響される。世論は無視すべく、かつまた注視すべきものではある。その辺のさじ加減が為政者には必要だ。
+ 「おおばくち」というのは勿論帝国陸軍が行った昭和の戦争である。なかんずく太平洋戦争である。皆様ご案内のとおり、ばくちで丁の目を出し続けることは不可能である。
ここでビギナーズラックである満州帝国で打ち止めにして守勢を固める手はなかったか考えてみよう。
そうすれば、明治維新以来の大業に加えて満州帝国を保持できた可能性はある。しかし、国民には厳しい経済生活を要求しなければならない。それでは持たないと帝国陸軍は考えたのだね。国民は飽きっぽくて、こらえ性がないからね。
日本政府と帝国軍隊は目先もっとも安易な道を選んだ。それが誤まりのもとであった。