今回の選挙で安倍首相が、「格差社会は経済成長で克服できる」などと言っていた。経済成長すれば、国家が豊かになり、財政支出にゆとりができるというものである。そのためには、手っ取り早く大企業を減税させると、経済活動が活発になると言うものである。
これは自己矛盾である。現在日本社会に起きていることは、経済成長が順調で、戦後最長らしいが庶民や地方には実感がない。これが格差になっているのである。経済成長すれば、富が均等化するというのは現実に起きていない。企業が肥大化するばかりで、格差は広がるのである。
経済成長が作り出した格差社会は経済成長すれば解決できる、などと少なくとも庶民や地方は信じていない。日本の60年代や70年代の経済成長は、現在よりもかなり均等に富が配分されていた。労働組合が、さまざまな権利要求で肥大化する企業から富を奪い取っていたのである。常時二桁成長の社会が、「一億総中流」意識を持たせてはいた。
中国がその当時の日本に似る経済成長を続けている。社会主義国である(と、彼らは言っている)中国には、労働組合もなく企業の社会的なモラルもない。しかしながら、二桁の経済成長を続けている限り、多くの社会的矛盾や不満をかなり吸収しているのも事実である。
経済成長下にあるからこそ、中国はこれを止めることができない。経済成長が、いったん止まると社会的矛盾が噴出することが目に見えているからである。
安倍ボンは、日本の僻地や農業や、都会で正規雇用されずに労基法に抵触したままの労働者に「格差」という、犠牲を強いることで成り立っている好景気の 日本を理解できない。そのことで、参院選で惨敗したのであるが、政策は理解されていると解読不能な理由で続投を開票中に表明した。この男は、政権能力、資質そのものが欠けているとみるべきであろう。