NHKが時々素晴らしい番組を制作してくれる。「イモが世界を救う」という番組である。難点は、BSの深夜であったことくらいか。
世界で多くのイモが作付されている。代表的なところでは、アンデスから世界にヨーロッパ人が広めたジャガイモ、東南アジアで作られるサツマイモ、おもにアフリカで作られるヤムイモである。
イモはカロリーが高く痩せ地でも結構収穫される。日本でも青木昆陽が、サツマイモで飢饉を救ったことはよく知られている。逆にヨーロッパではジャガイモが不作になったため、餓死者が出たこともよく知られている。
ペシャワール会の伊藤和也さんが、現地にあうサツマイモの改良に心血を注いでいた。ほとんど成功する段階で、殺害されたが彼の意思は引き継がれている。おりしも国連は2008年を国際イモ年としている。
ナイジェリアでヤムイモの作付に画期的な手法を広めようとしているのも、菊池さんという日本人である。ヤムイモはとても美味しくカロリーも高いが高価で、現地の人もあまり食べることがないそうである。ヤムイモは種イモ一つで3つの苗しかとれないが、彼はそれを画期的な方法でほとんど無数の苗を作る技術を開発した。
本当の意味での、海外援助はこうしたことにある。日本の農業は衰退の一途をたどっているが、日本農業が培ってきた技術は世界各地で大きな成果を上げている。
イモのもう一つ素晴らしいことは、穀物と異なり備蓄が利かないということである。穀物は備蓄ができるために、食糧戦略物資となり投機の対象にもなる。人類が富を得た最初の物質が穀物である。
備蓄が利かないために、ほとんど現地で生産しなければならないのである。イモを作ることは自らの食料を自らが作ることになる。貿易商品にもならない。大資本も巨大国家も無関心である。そうした意味でも、イモによる食料確保は飢餓国家の人たちを救うかもしれない。