日本の牛には、全て黄色の耳標・タグが付けられている。10桁の番号は個体識別方法として、BSE発生を受けて日本が行った、トレイサビリティー(追跡可能)システムである。
日本の牛飼いは、牛が産まれると3日以内に耳にタグを装着して報告しなければならない。畜産農家の義務である。黄色のタグは遠目にもよく解る。
時代背景が古いような映画では、牛の顔を映すことができない。撮影に相当苦労しているのが、当地で行われたロケと完成作品を見るとよくわかる。外すことは犯罪行為になるし、外すと再装着ができない。
面倒な作業が増えたが、畜産農家にも良いことがある。耳標がなければ売ることも解体することもできない。その結果盗難が無くなったのである。盗んでみたところで、売ることも処分することもできなくなったからである。
ミシガン州では、非接触データー識別標が耳に装着されているとのことである。先月161頭ものの牛が盗まれた牧場があったが、いまだに犯人は特定できたいない。総額1500万円ほどだそうである。日本なら5000万円ほどになるだろうか。
テキサスでは2007年に牛の盗難は2000頭だったそうであるが、2008年には8000頭にもなっている。要するに、アメリカの個体識別システムは、全く機能していないのである。
牛の解体にしても、アメリカの場合は相当人件費を日本に比べ削っている。衛生面もかなりいい加減なところがあり、作業員の発病は珍しくない。
日本の牛肉生産システムは、衛生面や家畜の個体状況の判断なども厳密である。日本の牛の内蔵廃棄率は何処でも、50%程にもなる。アメリカは、ほんの数%に過ぎない。この判断は難しい。安全・安心とは同一の基準で判断しなければならない。
海外に食料を求めると言うことは、結局はこうした危険性と、供給不安を拭い去ることができないのである。しかしながら、こうした内情に疎い一般消費者は、WTOなどが主張する貿易のグローバル化に同調するのである。