日米安保条約が暫定的な旧条約を改訂して、19日で50年になった。60年安保条約改定反対運動は、日本最大の反政府運動であった。前年の三井三池闘争の労働運動に比して、学生が先頭になった運動であった。時の全学連の名前は世界に知れ渡った。6月15日には、東大女子学生樺美智子さんが殺されている。
日本は、良くも悪くもアメリカに寄り添い、東西冷戦真っただ中で西側につく選択をした。占領軍時代に比して、対等な同盟とされながらも一方的にアメリカに従属する関係となったのである。アメリカは共産勢力の拡大阻止の拠点に、日本を位置づけた。その後、アメリカに従属し核の傘の下で、日本は着実に経済成長を遂げ、世界第2の経済大国になった。この時に日米安保条約を結んでいなければ、今日の発展はなかったと思われる。しかしそれもこの国の選択である。多くのものを失なったことも忘れてならない。
とりわけこの後の日本は、農村から労働者を都会に送り込み、地方を疲弊させ農業を無残な形にさせた。61年の農業基本法がこの役割を担った。農村への補助は道路の整備と、農地の基盤整備やダム建設など土木事業ばかりとなったのである。安保条約を、都会から経済発展ばかりで見ると、偏った見方になってしまう。
東西冷戦は東側の崩壊で終結したが、アジアには微妙な形でまだそれが残っている。自らを社会主義国と称する共産党独裁政権の世界第2位の経済大国の中国と、金王政を敷いている北朝鮮も社会主義国と呼んでいる。これらの存在が、現在のままの安保条約の必要性を説く人物にとって格好の材料となっている。
世界は多極化しているし、これほど長い同盟関係は世界的にもまれである。また独立国でありながら、アメリカの基地を半世紀以上にわたって駐留させるもの異常である。しかも、唯一の地上戦があり多くの犠牲者を出した沖縄に、75%も押し付けている。
核兵器持ち込みなどの密約に見られるように、ベトナムへやアフガニスタンへの出撃など、日米安保とはほとんど無関係に、アメリカは日本の基地を自国の戦争のために使っているのである。もっと使ってくださいという意味ととれる、思いやり予算などで日本は更に服従の対ソを示している。
日米安保条約は、成立当時の背景を考えるまでもなく、大きく変化した世界情勢の中にあって歪な関係になっている。アメリカのオバマ大統領は、ブッシュの単独行動主義を見直しているし、日本では歴史的な政権交代を迎えた。この際日米の在り方を、単なる従属関係から脱却するいい機会ではないか。普天間基地の移転は、そうした意味で鳩山政権の踏み絵と見て取ることができる。