そりゃおかしいぜ第三章

北海道根室台地、乳牛の獣医師として、この国の食料の在り方、自然保護、日本の政治、世界政治を問う

日米同盟のもたらしたもの

2010-01-20 | 政治と金

日米安保条約のもたらしたものは、この50年で多大なものがあることは刈らずもながであるが、様々な産業構造にとって大きな変化を与えたことだけはは事実である。多くの産業については、語るだけの力量は自分にはないのは解っている。しかし確実にこの間に私が直接かかわってきた、酪農業についてははっきりとしたことが言える。

多くの人は、一昨年穀物が高騰したので酪農製品が値上がりすることを理解されていないよ うである。牛が、輸入穀物を大量に食べているとは思ってもいなかったようだ。日本はおおむね、3000万トン近くの穀物を輸入している。その3分の2が家畜用であることも、説明しなければわからないことである。穀物の輸入先は、ほとんどがアメリカである。

アメリカは軍事大国であると同時に、農業大国である。100年以上前の、トムソーヤや大草原の子どもたちが遊んだ、木々が茂り水が豊かに流れるプレリーは、広大な穀物を生産する農場に変わった。水は地下水を汲みあげて、地平線の彼方まで穀物を作付している。巨大になった農場で生産された4億トンのコーンは、半分は家畜に向けられる。大量生産で安価になるためである。質など問われることなどない。

高度成長下で生産された自動車などを日本が売り付けた見返りに、穀物を大量に輸入することになった。最初は人間のために、次は家畜のためにである。そのためには、コメを主体にした食の体系の見直しさえも日本に強要した。畜産製品の摂取へと、大きく日本人の食は変わり人と家畜への穀物の売り込みにアメリカは大成功したのである。当事者自身も驚くほどであったと振り返っている。

これを可能にしたのは、安価で安定的な穀物の供給である。この背景にあるのが、日米安全保障条約である。他にもアメリカから輸入されたものも少なくはないが、現場でこの変化を長年にわたってみてきた実感である。乳牛が40年前とすっかり変わってしまった。乳牛の改良もアメリカの思うままである。飼養管理も、穀物協会の指導がすっかり浸透している。今では、日本最大の酪農地帯でも草に頼る酪農家もすっかり少なくなってしまった。

05082435この地でも、乳牛の多くは閉鎖された牛舎で穀物主体の飼養管理に変わってしまっている。草地で自由に草を食べらっる牛も少なくなってしまった。改良された乳牛は、穀物を牛乳や肉に変える能力が突出した資質を持つものである。かつては5産以上していた乳牛は、今では2.5産平均にまで落ち込んで淘汰される。

高生産を強いられる乳牛は、大量の穀物を与えられて、肥満にあえぎ肝臓疾患との戦いである。肉や卵を大呂に食べる人間も肥満体形になって、いまや腹囲を測られてメタボの基準を健康検査の対象になっている。

農村から農民を奪ったのも、酪農に限らずこの高度成長経済下の出来事である。国益のためには他国の伝統的な食の体系を変えることも厭わない、アメリカに従属する国家日本の姿の背景に安保条約をみることができる。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

羅臼港

春誓い羅臼港