イーストマン・コダック社が、1月19日にアメリカの連邦破産法11条の適用を申請した。言わずと知れた、世界最大のフィルムメーカーである。写真をやるものとして、隔世の感がある。
一時は、コダック社のフィルムで映画を撮らなければ、オスカーが取れないとまで言われた。日本でも、私の周辺だけでも、コダクロームを譲らないカメラマンが少なからずいる。私は今でも、風景写真は富士フィルムを用いて、645を使っている。
その富士も一時は、フィルムの生産を中止する動きもあったが、デジタルへの乗り遅れを何とか回復して、今でも少量の生産をしている。
報道は、コダックはデジタルに乗り遅れたと、単純な報道を繰り返している。しかし、世界最大のフィルムメーカーが倒産するのは、それだけの理由とは思えない。
デジタルが出たころ、コダックは革命的なデジタルカメラを開発した。デジタルの基盤がデスクになって、それをコダックに出すと、プリントしてくれるといものである。コ
ンピューターの普及がそれほどでもない時期、何度も使える画期的なカメラになるはずであった。
ところがこの、デジタルデスクカメラは極めて画質が悪かった。高品質を誇ったコダック社の大失敗である。顧客のニーズを理解していなかったのである。
その他、一回り小さなAPSカメラを開発したり、インスタントカメラを開発したりもした。APSカメラは画期的であり、今でもデジタル一眼レフの機種のもとになって、規格が残っている。
インスタントカメラは、日本の使い捨てカメラに簡単に凌駕され、市場にすら出てこなかった。要するに、単にデジタル化に乗り遅れただけではなく、その前に顧客を軽く見た結果であることがわかる。
コダクロームの画質は、今でも他社の追随を許さないものがある。大衆化への努力を怠った、殿様商売が破産へと導いたのである。大変残念である。