そりゃおかしいぜ第三章

北海道根室台地、乳牛の獣医師として、この国の食料の在り方、自然保護、日本の政治、世界政治を問う

それでもキャパは偉大である

2013-02-03 | 政治と金

今日のNHKスペシャルは、久しぶりに傑作を見た気がした。戦場写真家のロバートキャパを、ライフの取り上げられて一躍有名にした、「崩れPhoto落ちる兵士」の写真の、真贋についである。

この戦場の写真として最も有名なこの写真は、発表当初から多くの疑問が指摘されていた。それらの疑問に、キャパは固く口御閉ざしたままであった。番組は、キャパのフアンでもある作家の沢木耕太郎氏が、NHKなどの最新の技術を用いて解明していた。

キャパの研究所が提示ている、同じ時に撮られた42枚の写真の地平線の形から、場所を特定した。スペインのエスペホの丘と特定した。

同じ写真から、銃が戦闘用になっていなかったこと、戦闘が起きた時よりも早く撮られていたこと、を特定している。同じ人物が撮られた類似の写真の中から、直前の1枚の写真を特定している。

更に兵士たちの動きから、この直前の写真が0.86秒前であったと推察し、異なるカメラで撮られていると断定している。更にそのカメラは、2眼レフのローライフレックスであると推定している。キャパはライカで撮っていた。

ローライを使っていたのは、2歳年上の同じユダヤ人の恋人のゲルダである。ゲルダも戦場カメラマンとして活躍していた。崩れ落ちる兵士の写真は、同じ流れの中で彼女が撮った写真だと、沢木は推察する。

ゲルダは、ライフにこの写真が発表される直前に、同じくスペイン戦争で撮影中に亡くなっている。

崩れ落ちる写真が、兵士たちの非戦闘時に撮られていること。写真を撮ったのはゲルダであったこと。キャパは共和国側に立っていたこと、などから彼が、この写真について語らなかった胸の内が読める。

彼はその後、この写真の事実と恋人の死から立ち直り、ノルPhoto_2マンディー上陸作戦の兵士を撮っている。しかも前からである。銃弾の中での写真は、写真処理の誤りで流れていることが返って、臨場感を表している。

私は「人間とはないか」という写真集を若いころ買っている。キャパの写真が数枚ある。戦争の意味を問い、告発し人の心を強く打つものである。キャパは、1954年にインドシナ戦争で、ベトナム取材中に地雷を踏み死亡している。

写真の持つ力をキャパは引き出し、戦争の意味を問い続けていた。「崩れ落ちる兵士」が、非戦闘時であっても、恋人の撮ったものであったとしても、彼の偉大さは何も失われるものではない。

コメント (1)
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