九条の会の事務局長の小森陽一さんの講演会が昨日(19日)釧路で開催され、友人たちと聞きに行った。相変わらずエネルギッシュで明快な講演会であった。
この5日ほどで、北海道各地の九条の会などの支援で、駆け足講演である。今回の安倍自民党の勝利とその後の動きによる、危機感の表れでもあろう。
自民党の改正憲法案の解説、説明が素晴らしかった。そもそも憲法は、権力者を国民が縛るものである。司法権力、行政権力、立法権力が国民に奉仕することが、現行憲法の基本になっている。権力者が暴走することなく、国民に奉仕するのが求められているのである。
これに対して、自民党草案は、国民は公益のために奉仕すること、個人の権利と自由は濫用してはならないと、憲法が国民を規制している。自民草案は全面に、こうした意向は強く表れている。
自民党憲法草案は、冒頭に天皇を国家元首に置いている。国家元首として、天皇はあらゆる権力機構の上に置かれているのである。天皇を神聖にして侵すべからずとした、明治憲法へ大きくシフトしている。
九条の1項は残しているように見えるが、2項で国防軍の保持を規定している。国防軍は、集団的自衛権の行使を意識した内容になっている。軍事裁判所の設置を規定している。いつでも戦争のできる国家を目指した内容で、残した1項はないに等しい。
98条では、緊急事態の場合は閣議で決定することができ、首相は超法規的存在となることができる、としている。あらゆる権力が集中することになるのであるが、まるで戦争をいつでもできると言った内容である。
表現の自由は、公益などを害する活動はあからさまに認めないとしている。政府がその判断をするのであるが、まるで治安維持法のようである。憲法が国民を縛っているのである。
格調の高い現行憲法の前文に比して、自民党草案の前文は恣意的に民族的意識を煽り、狭量なものとなっている。
この講演で、小森氏は九条の会を設立した小泉政権時代は、改憲が6割、護憲が2割であった。これを、九条の会の活動が押し戻し、改憲4割護憲5割まで押し戻した。現在はもっと改憲が増えそうな時代である。地道な九条の会の活動を広げることによってしか、これを押し戻すことができないと、励ましの言葉をもらった。