オサマビンラディンが暗殺されてか、世界はテロに危険から遠のいたと、オバマが胸を張って発表した。それからテロは減ったか?テロ組織は少なくなったか?答えはノーである。
アメリカは、9.11が起きたことを暴力的に理解し、暴力的に解決を試みた。アメリカと中東諸国の関係、とりわけイスラエルとイスラム諸国との関係、さらには石油を巡る利権についての、この地域の人々の不満について全く理解しようとしなかった。単に暴力的報復を行ったに過ぎない。
アフガニスタンでもイラクでも、殺害されるのは圧倒的に一般国民である。特にみじん爆撃機は、遠隔地にあるアメリカの存在同様、自分たちを観戦者の席に置いての、劇場的報復と言える。
アメリカの侵攻が行ったもう一つの大きなことは、それまで封印されていた宗派間の対立を呼び覚ましたことにある。宗派間の対立は、アメリカの行った不条理を一部覆い隠す作用すらある。しかもこれは、永続性がある極めて深刻な問題である。
左の表はNHK製作の表であるが、判明しているテロ組織の現状を表しているものである。テロの規定は難しいが、暴力的に他者を葬る組織であるとするならば、この程度ではない。
ベトナム戦争の数年前に、アメリカはレッドパージを行った。アメリカから、中国関係の研究者がいなくなった。このことが、ベトナムはもちろんのことソ連も共産主義も、理解できなかった原因と言われている。それが、ベトナム戦争を泥沼化させた。
今回も、アメリカではイスラム教徒や中東の人物を、メディアや劇場映画で悪役に祭り上げたりして、無理解への道を開いたのである。最も無理解だったのが、アルカイダに対してである。
アルカイダは組織ではない。アメリカはトップを叩けば、無力となり消滅してしまうと思っていたが、現状は火の粉が拡大したに過ぎない。地域ごとの連絡がないため、さらに厄介になっている。宗派間の抗争も同じであるが、小規模あるいは小地域の暴力行為は、拡散するばかりで止める手立てすらない。
世界は暴力が暴力を制したことがないのを理解するべきなのである。そうした意味で、アメリカの力の行為はテロリストと同じ思想なのである。