そりゃおかしいぜ第三章

北海道根室台地、乳牛の獣医師として、この国の食料の在り方、自然保護、日本の政治、世界政治を問う

酪農の助成金が乳製品価格を上げ、巨大規模の足腰の弱い酪農家を作り出す

2018-05-25 | マイペース酪農

今北海道の健全な酪農家はバブル状態である。乳価はどんどん高くなるし、乳牛の個体販売が信じられないくらい高いからである。バブルでなく経営内容が危ういのは、政府が薦める巨大酪農家である。巨大酪農家に危機感がないのは、補助金漬けで経営内容に実態を自覚していないからである。

健全な酪農家は、農地面積にあった乳牛を飼育し、牧草を主体とした自給飼料によって、牛にも土地にも負荷をかけない営農をしている。上の絵のように、乳牛たちは広い牧草地で生理にあった飼料、つまり牧草をたっぷりと食べているからである。乳牛は健康な体から完全食品と言われる牛乳を、体力と食べたものにあった量だけ生産してくれる。
健全な酪農家の乳牛は全然病気をしてくれない。お抱え獣医師の私はサッパリ儲からない。健全な酪農家とは私たちの根室地方では、1町歩(100メートル四方)に成牛1頭程度の農家である。ここでは平均50町歩ほどであるから、搾乳牛が40頭で育成が20頭くらいの規模である。
輸入穀物は年間1トンも給与しないので、年間1頭あたりの7000キロも生産しない。因みに、平均穀物給与は日本平均で2.5トンとで、泌乳量は日本平均で8500キロ程度である。健全な酪農家は1戸当たりの出荷乳量は、300トン前後である。つまり餌も買わなければ、生産量も少ない、病気もなく、設備投資も少なく、牛たちはベテランが多く牛群が落ち着いている。牛たちにストレスがないのである。酪農家の手取りは年間1500万円程度である。

ところが国が酪農の大型化を進め、巨大な投資を促している。巨大酪農家は400頭以上を飼育し、1台3000万円するロボット搾乳機を10台程度導入し、生産乳量は400頭なら4000トンにもなる。牛は2産で淘汰される消耗品で、収益率は5%前後であるが、外部資源と外部資本に依存するため、きわめて不安定な経営となる。生理に合わない輸入穀物は年間3.5トン給与する。購入穀物は乳代の4割にもなる。閉じ込められた牛舎のコンクリートの床の上を障害歩くことになり、ストレスを恒常的に受けて、いつもに病的状態にある。
国の農業政策は、酪農家に機械を大量に買え、設備投資をして巨大な設備を造れ、大量の穀物を購入しろ、牛をストレス状態にして病気にして薬漬けにしろ、大量の牛乳を生産しろというのである。ご推奨の600頭規模なら10億円になるが、国がほぼ半分を出してくれる。

北海道が生産費調査をやっている。健全な酪農家の1キロ当たりの生産費は約45円ほど、500頭規模の農家の生産費はキロ当たり91円である。これでは大型酪農家が持たないため、乳価をどんどん上げる。大型農家には返済能力はない。国の補助をほとんど受けていない酪農家から、大型農家は牛が早く淘汰されるし規模拡大しなければならないために、高くなった乳牛を飼わなければならなくなる。こうして国の支援を受けた大型農家はさらに経費が嵩むことになる。
結局、国は大規模信仰を疑わず税金を投入して、高価な牛乳を消費者に押し付けることになる。TPPに耐えられ国際競争力を持っているのは、国の支援がなく見放された酪農家という事になる。
何かおかしくないか。
コメント (5)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

羅臼港

春誓い羅臼港