グルジア問題をめぐって、ロシアが強硬である。早々とオセアチアとアブハジアの独立を認めてしまった。口先で何とか文句つけてはいるものの、アメリカもEUも具体的に動けはしない。ロシアは本気である。メドベージェフの支持率はうなぎのぼりである。
ロシアには、屈辱の90年代がある。ソビエトが崩壊して、アメリカにいようにやられっぱなしであ った。ここにきて、ロシアはエネルギーの国有化を強力に推し進めている。天然ガスは世界一位、石油は二位の現状である。
EU諸国は、石油の三分の一をロシアに頼っている現状では、具体的な行動はとれない。コソボの独立を認めたばかりでは、言うことが逆であろう。
NATOが、旧ソビエト諸国を取り込み勢力を拡大している。ロシアの屈辱感は、こうしたところでもてこになっている。大国時代への回帰をロシアは望んでいる。
グルジアには、BTCパイプラインが走っている。アメリカが、ソビエト崩壊後のどさくさにま ぎれて建設したものである。これは屈辱のロシアの象徴である。アメリカにとっては、どうしても守りた い地域である。
ロシアと、アメリカ・EUの対立構図は「新冷戦時代」とも言われているが、基本的に全く異なるものである。旧冷戦時代には、相互に依存することはなかった。お互いがあらゆる面で対立していたのである。
現在の対立構造は、相互に依存しながらの対立である。強硬な発言をしても、手を出せないでいる。黒海には艦船を浮かべて監視しているだけである。
共和党の大統領候補の、マケインはサミットからロシアを外せと発言している。イタリアやカナダを抱えて、そんなことができるわけない。自らが浮くだけである。アメリカの覇権主義は変わることはないが、覇権を握っているわけではない。
アメリカには、ロシアのようなジレンマを感じる程の繊細さはないが、資源大国となり経済成長を続けるロシアを具体的な対抗軸との認識はない。そうして意味でも、旧冷戦時代とは異なり、かなり複雑な対立関係になっているといえる。